2013 Fiscal Year Research-status Report
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23720118
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小林 ふみ子 法政大学, 文学部, 准教授 (00386335)
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Keywords | 地域交流 / 北関東 / 東北 |
Research Abstract |
狂歌書目作成の柱となる茶梅亭文庫の蔵本およびその情報蓄積について、数年来アクセスを難しくしていた所蔵者側の事情がある種の解決をみたことにともなって、ようやく全貌が明らかになりつつある。茶梅亭文庫には、稀覯本を含む、3000点以上の狂歌本の所蔵があるが、それだけでなく所蔵者が蓄えてきた過去五十年以上にわたって古典籍市場に出た書目についての情報蓄積が、かなり整理された状態で保存されていることが判明した。 その後の行方が判らないものも少なくなく、私家版であるために稀覯本の多い狂歌本についての非常に貴重な記録といえる。 茶梅亭文庫調査また関連する調査の過程で、披見し得た浅草連関係の資料によって、浅草が拠点となって、寛政以後、狂歌が北関東や東北に広がりを見せた、その具体相を明らかにし得た。大田南畝の門人にあたる浅草市人という人物が率いたグループの活動の地方展開の一端にあたるが、たんに江戸と地方を結ぶだけでなく、地方を拠点として他の地方との交流が生まれ、またその過程で各地の名所・名物を実情に即して詠むことが行われるなど、狂歌という文芸形式が各地それぞれの文化の形成と発信に資するものとなったことを指摘した(「狂歌判者浅草市人の地の利」)。また当文庫にはさらに貴重な資料があることが続々と判明している。なかでも江戸後期の狂歌壇の重鎮となった四方真顔が文政7年を限りに月次狂歌会の判者を引退することを門人たちに周知した資料を見いだし得たことは、江戸後期の江戸狂歌壇とその中心であった彼の晩年の活動とを考えるうえで非常に貴重な発見であった。追って調査を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前述のように当該文庫へのアクセスが、本研究申請時には予想できなかった事情で長らくほぼ不可能という状態が続き、今年度後半にようやく調査を開始することができるようになったため。また、予定していた研究協力者の勤務状況により共同で研究を進めることが困難になり、独力で計画を遂行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該文庫の蔵本の偏りなどを理由として、目録の公開に向けて所蔵者とまだ議論の必要がある。残り一年で、どのような基準を立てて、意義がありかつ理にかなった一定の狂歌書目を作れるか模索したい。 現状で想定できるのは、手元に一定程度情報の蓄積がある江戸狂歌について、茶梅亭文庫資料で補って書目化することである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すでに記したように研究の中核となる文庫へのアクセスが、予定外の事情で不可能になったため、大阪までの旅費として使用する予定の分が大幅に不使用のまま残った(ただし年度をまたいで3月末から4月に出張してすでに使用した分がある)。また協力者に謝金として支払う予定であった分も、働いてもらうことができなかったために残っている状態にある。 今年度、ようやく実質的に集中して作業できる状態となったので、文庫の所在地である大阪への長期出張をなんどか行い作業を進めたい。そのための出張滞在費に多くを充てる予定である。
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Research Products
(1 results)