2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720119
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
牧野 淳司 明治大学, 文学部, 准教授 (10453961)
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Keywords | 国文学 / 中世文学 / 唱導 / 寺院資料 / 平家物語 |
Research Abstract |
日本の寺院資料のうち、唱導資料(各種の仏事法会儀礼に関連して作成された文献)の研究を行った。 日本の唱導で、もっとも重要な流派の一つである安居院流の唱導資料を中心に研究を進めた。特に、国立歴史民俗博物館所蔵『転法輪鈔』(全4帖)は、安居院流唱導資料の基幹部分を構成する『転法輪鈔』の一部であるが、学会でまだ紹介がなされていない。本資料の翻刻を行うと同時に、収録される表白(仏事法会で導師により読み上げられた趣意文)の解題的研究を進めた。これまで読解・活用がなされてこなかった表白の分析を行うことで、日本中世において「唱導」という行為が担った意味と、それに伴って作成された唱導資料の文化史的意義を明らかにしていくことができた。 国立歴史民俗博物館所蔵『転法輪鈔』の研究を進めると同時に、関連する安居院流の唱導資料(永井義憲氏所蔵本など)の調査を進めた。また同時代の唱導資料(東大寺僧であった弁暁の唱導資料など)や、安居院流唱導資料を活用して作成された後代の文献なども視野に入れて、唱導文献の資料的価値について考察を行った。当初は、南都文化圏や真言宗圏も含めて唱導資料の意義を綜合的に見定めようと計画していたが、膨大な量の資料を前にして、十分な調査は行えなかった。しかし、安居院流唱導資料を中心に、唱導資料の文化史的意義を、従来より踏み込んだ形で明らかにできたと考えている。 なお、唱導資料研究を進めるのと並行して、延慶本『平家物語』の注釈的研究を実施した。ここでは、『平家物語』が唱導という営みの遺産をふんだんに吸収しつつ成り立っていることを、具体的事例に即して示すことができた。これにより、唱導資料の文学史的意義の一面も示すことができた。
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Research Products
(3 results)