2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720124
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
箕浦 尚美 大阪大学, 文学研究科, 助教 (70449362)
|
Keywords | 本地物 / お伽草子 / 説話 / 仏教 / 誓願 / 金剛寺 |
Research Abstract |
中世の信仰を色濃く反映するお伽草子「本地物」のうち、『阿弥陀の本地』や『日月の本地』等、仏や菩薩の前世を描いた作品の祖型は、平安時代中期に日本で撰述されたと考えられる『大乗毘沙門功徳経』『観世音菩薩往生浄土本縁経』等の偽経として存在している。それらは、従前の経典内容に不足を感じるようになった時代の要請に応じたものであり、当時の菩薩行や誓願観を反映していると考えられる。本研究の主な目的は、その思想と説話・物語との関わりを明らかにすること、また、後代のお伽草子「本地物」の構造について、菩薩行や誓願の視点からの見直しを図ることの二点である。本年度は、平安期資料と中世本地物語とを菩薩行・誓願の観点からそれぞれ整理した上で統合することを目指し、以下の研究を行った。 1平安期における菩薩行・誓願についての把握・分析。先行研究を用いて菩薩行・捨身の記事を整理し、当時の思想を確認した。また、菩薩に関する経典記事の抜き書きである金剛寺蔵〈佚名諸菩薩感応抄〉の精読を引き続き行った。 2平安期の説話・物語における菩薩行と誓願の把握・分析。『大乗毘沙門功徳経』『観世音菩薩往生浄土本縁経』の主人公が仏や菩薩に成る部分に着目し、捨身を伴う誓願が重視されていることを論じた。 3中世本地物語の分析。本地物語の主人公が仏や菩薩に成る部分に着目して『大乗毘沙門功徳経』等の初期本地物語との比較を行った。誓願や捨身への意識の濃淡が、仏や菩薩に成る物語群に変化を与えていることを論じた。 4文献調査と情報収集。金剛寺における聖教共同調査へ参加し、中世聖教の把握に努めた。また、関連の学会に参加し、研究情報の収集に努めた。 5研究発表。清華大学(中国・北京)で行われた国際シンポジウムにおいて口頭発表を行った。また、論文を執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『大乗毘沙門功徳経』や『阿弥陀の本地』を中心に、本課題の最重要テーマである初期本地物の菩薩行と誓願を論じることはできたが、より広い範囲の作品について考察すべきと考えるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
より多くの作品を考察対象とし、菩薩行・誓願・捨身の視点から本地物語の構造を分析する。 1平安期における菩薩行・誓願の把握・分析。(1)金剛寺蔵〈佚名諸菩薩感応抄〉の精読を継続する。(2)『大乗毘沙門功徳経』『観世音菩薩往生浄土本縁経』の分析を深める。(3)『今昔物語集』『三宝絵詞』『私聚百因縁集』等における天竺説話の菩薩行や誓願を分析する。 2中世本地物語群の分析。複数の本地物語について、その構造を菩薩行・誓願の視点から整理し分析する。 3文献調査と情報収集。 4研究成果発表とまとめ。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)平成25年度に海外での研究発表のための支出を見積もっていたが、学会開催機関からの補助を受けて予定よりも少ない支出で済んだため。 (2)平成25年4月より新たな機関に所属して他の業務が増え、調査研究のための出張回数を確保できなかったため。 主に、国内での研究調査旅費として使用する。
|
Research Products
(2 results)