2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720125
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
水谷 隆之 佛教大学, 文学部, 准教授 (60454500)
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Keywords | 日本近世文学 / 浮世草子 / 俳諧 / 遊女評判記 / 井原西鶴 / 北条団水 |
Research Abstract |
本研究は、浮世草子、俳諧、遊女評判記などの分析を行うことで、井原西鶴とその第一の門人である北条団水について、両者の関係性を明確にし、双方の作品を新たに捉え直すことを目的とする。その二年目にあたる今年度は、以下の研究成果を得た。 (1)『好色破邪顕正』(貞享四〈1687〉年五月序)は、当代の好色本のみならず当時流行の浮世草子をも批判した書として従来注目されてきた。本書が団水作であることや、『伊勢物語』『源氏物語』『徒然草』の古注釈書を用いて執筆されていることは「団水の初期作」(『近世文芸』81号、2005年)にすでに述べたが、本書の「好色論」の内容についてはさらに追究する必要があった。そこで、本書が当時の『徒然草』注釈書の記述にもとづいて「物のあはれ」を喚起しうるいわば正しき「好色」を認める立場をとること、それまでの勢語学・源語学に説かれていた虚実説、寓言説を実直に踏襲していることを指摘した(学会発表「団水の好色論」佛教大学国語国文学会)。本書は、古典注釈書の好色論を当代の好色本批判にまで敷衍しつつ、「虚」「実」の正しい理解を示し、西鶴や団水の俳諧、浮世草子が好色の放埒を勧めるものでも「嘘」「偽」でもないことを理論的に跡付け、その正当性を明らかにしようとした書であると考えられる。 (2)京都島原の遊女評判記の調査およびその翻刻を前年度に引き続き行った。 (3)研究報告者がこれまでに発表した西鶴と団水の浮世草子、俳諧および両者と出版書肆との関係についての論文に全面的に加筆・修正を施したうえで、上記(1)(2)を含む今年度までの本研究課題の研究成果を加えて、『西鶴と団水の研究』(和泉書院、2013年2月)として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遊女評判記の調査・分析については当初の計画よりも遅れているが、西鶴と団水の関係および俳諧と浮世草子の関係に関する研究成果を予定よりも早く単著にまとめて公刊できた。
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Strategy for Future Research Activity |
遊女評判記の調査・分析に重点を置く。また、今年度までの浮世草子・俳諧に関する研究成果を論文化して公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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