2011 Fiscal Year Research-status Report
近世における王朝文学享受ネットワークとジャンル意識についての研究
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23720130
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
小川 陽子 松江工業高等専門学校, 人文科学科, 講師 (50512266)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中古中世女流日記 / 中古中世王朝物語 |
Research Abstract |
王朝文学作品を享受した人々のネットワークを解明する一階梯として、今年度は、中古中世女流日記に関する先行研究文献、ならびに、全国の文庫および図書館の蔵書目録を使用して、各日記作品の伝本について残存状況の整理を行った。また今後のデータ活用に向けて、データベースの基礎を構築した。従来は各作品ごとの研究が主体であり、複数作品の伝来について横断的な検討は行われてこなかった。しかし複数の作品を所持していた人々がおり、かつその人々の多くは王朝物語作品をも享受している。日記作品の伝本所持者について、作品横断的に情報を整理することで、王朝文学に関わった人々のネットワークを立体的にとらえることが可能となる。本年度はそのための基礎作業を行った。当初の計画では国文学研究資料館所蔵マイクロフィルムを中心に伝本調査を行う予定であったが、平成23年8月から育児休業等の取得に伴う研究中断となったため、予定していた研究については復帰後に再開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年8月から育児休業等の取得に伴う研究中断となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究費の次年度使用額が多くなったのは、平成23年8月より産前産後休暇および育児休業を取得したためである。これにより研究課題の遂行が当初計画より大幅に遅れているが、研究上の手法等で問題が生じたわけではないため、職場復帰に伴う順調な遂行が見込まれる。本研究の推進には、データベースの有効活用が不可欠である。これまで「散文検索システム」を利用したデータベースの構築を目指しているが、同システムは文字どおり、本来的には散文を検索するためのものであり、伝本に関する情報を同システムによってデータベース化するには、さまざまな工夫が必要となる。そこに本研究の推進が左右されるといっても過言ではない。このため、具体的な伝本調査を鋭意進める一方で、今回の研究テーマによりふさわしいデータベースの構築に向けて、「散文検索システム」の作成者である中村康夫・国文学研究資料館教授の助言を仰ぎつつ、他のデータベースに関する勉強も重ねていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、中古中世女流日記作品の現存諸伝本の調査を重点的に行う。特に物語目録作成者およびその周辺の人々が書写ないし伝流に関わっていた作品(蜻蛉日記・紫式部日記・和泉式部日記・更級日記・建礼門院右京大夫集・中務内侍日記・十六夜日記)の調査を優先する。具体的には、国文学研究資料館所蔵マイクロフィルムをできる限り利用し、同館に所蔵されていない伝本については実見調査に赴く。このため、国文学研究資料館(東京都立川市)への出張、ならびに各作品の伝本所蔵先への出張旅費として、研究費の過半を使用する。また本研究課題の遂行に際し、特に詳細な情報が必要と判断した伝本については、研究費を使用して紙焼き写真を作成し、当該伝本の本文を随時確認しうる環境を整えていく。
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