2016 Fiscal Year Research-status Report
近世における王朝文学享受ネットワークとジャンル意識についての研究
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23720130
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
小川 陽子 松江工業高等専門学校, 人文科学科, 講師 (50512266)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2019-03-31
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Keywords | 中世王朝物語 / 中古中世女流日記 / 和学者 / 物語目録 / 清水宣昭 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、先行研究における現存伝本に関する情報を整理するとともに、国文学研究資料館および東海大学付属図書館桃園文庫にて、マイクロフィルム、紙焼き写真ならびに古典籍原本の調査を行った。マイクロフィルム、紙焼き写真、古典籍原本については、『紫式部日記』およびその注釈書、『中務内侍日記』『弁内侍日記』『十六夜日記』を中心に調査した。 さらに、これら先行研究および伝本調査によって得られた情報をもとに、近世における物語・日記文学作品の享受に関するデータベースならびに年譜を作成中である。 当該年度に調査研究を行った書物のうち、とりわけ注目したいのは、尾張の国学者である清水宣昭(1793~1868)によって著された注釈書、『紫式部日記釈』である。同書の特徴の第一は俗語訳にあるが、作り物語の近世期における享受という観点から注意されるのは、数多くの典籍を引用しながら考証が行われているという点である。その引用書目のひとつに『とりかへばや』が含まれているが、これまでのところ清水宣昭に関する奥書を有する『とりかへばや』伝本は知られていない。一方で、神宮文庫所蔵『とりかへばや』の見返しには、「宣昭云」という書き入れがある(国文学研究資料館蔵マイクロフィルムによる)。清水宣昭は『伊勢物語』『狭衣物語』『うつほ物語』にも関与しており、宣昭周辺における物語・日記文学享受については今後さらに重点的に追求していきたい(2017年8月に国際学会にて発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度は順調に研究を進めることができたが、それ以前に産休・育休による研究中断期間があったため、進捗が全体的に当初の計画よりも遅れている。しかし、研究期間の延長が認められたため、最終的には遂行可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は原本調査先を増やすとともに、引き続き国文学研究資料館におけるマイクロフィルムの調査を行う。さらに、同館および他の図書館等によってインターネット上に公開された伝本についても積極的に利用、調査したい。
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Causes of Carryover |
当該年度以前に産前産後休暇および育児休業の取得に伴う研究中断期間があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はポルトガルにて行われる国際学会に参加、研究発表予定のため、その旅費として使用する。また当該年度は国文学研究資料館におけるマイクロフィルムおよび紙焼き資料を重点的に調査したが、次年度は他機関へも資料調査に赴く予定のため、その調査旅費として使用したい。
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Research Products
(2 results)