2012 Fiscal Year Annual Research Report
持続発展教育のための現代アメリカ文学における持続可能性の表象研究
Project/Area Number |
23720133
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
松岡 信哉 龍谷大学, その他部局等, 准教授 (50351333)
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Keywords | 英米文学 / 持続可能性 |
Research Abstract |
本事業では、2015年から2014年の期間に国連が推進しているESD(持続発展教育)の観点から、主に現代の英米文学作品における自然と人間の持続可能な関係の表象を検証した。またさらにそのテキスト研究の結果を踏まえ、ESDのための教材を作成した。 本事業の成果としては二冊の共著(海外1、国内1)、論文2、学会発表2として発表するとともに、ESD教材の形で応用し、勤務校の授業で使用している。また、文学を通した持続発展教育のためのカリキュラム作りにも目下取り組んでいるところである。 本研究のテーマとして、文学作品が持続可能な発展の概念をとらえる仕方は肯定的か、否定的か、という点を見極める、ということがあった。研究代表者は研究期間を通してフォークナー、ウォレン、スナイダー、パール・バックなどのテキストにおける持続可能な発展の表象を解析したが、これらのテキストが人間の文明の持続可能性をとらえる仕方はおおむね悲観的であり、特に戦争を描くなかで人間の自由の持続不可能性を描いているさまが抽出できた。しかしながら特にフォークナーやウォレンなどの作家は人間の自由獲得のための格闘が持続不可能であることを示しつつ、自由を希求する魂の存続に希望を託す物語を綴っているように思われる。人間の生の困難さを真摯に見つめるとともに、そこに一縷の希望を見出そうとする文学的な営みは、これまた現代社会における困難かつ必要な営みであるESDと響きあうものがあると考える。 本事業の出発点では、研究代表者は主に自然と人間の持続可能な関係の観点から研究を進めることを目指した。しかしながら2011年3月の大震災と原発事故以降、自然の制御と汚染の言説の検証へとその射程を拡大し、今後も研究を進めてゆくことを考えている。
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Research Products
(7 results)