2011 Fiscal Year Research-status Report
ウェールズ英語文学研究の基盤創設に向けて―二十世紀小説を中心に
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23720136
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
河野 真太郎 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (30411101)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 文学 / イギリス / ウェールズ / 英語文学 / ウェールズ英語文学 |
Research Abstract |
平成23年度は英語ウェールズ文学の基礎研究を行った。平成23年度はまず、英語ウェールズ文学をめぐる基本的な問題を確認・整理するために、Dai Smith、Wynn Thomas、Raymond Williamsらの研究書を検討すると同時に、Gwyn Thomas、Alun Richardsらの文学者の作品の検討も行った。 具体的な成果として発表したものとしては、『愛と戦いのイギリス文化史1951-2010年』(川端康雄・大貫隆史・河野真太郎・秦邦生・佐藤元状編、慶應義塾大学出版会)の第20章「イギリスの解体――ウェールズ、炭坑、新自由主義」がある。この書籍は20世紀後半のイギリス文化史教科書として編纂されたものであるが、該当の章においては特にウェールズに注目し、田園的な農業国としてのウェールズのイメージと、産業化されたウェールズのイメージの相克の系譜をたどった。さらにそこでは、20世紀を通じて行われたウェールズでの炭坑闘争とその敗北の歴史、1997年以降に半自治権を獲得したウェールズの現状と新自由主義的な政治との関係を論じた。本研究課題はウェールズ英語文学のうちでも特に産業小説を主な対象とするが、この研究成果はそれを歴史的に位置づけるための枠組みを与えてくれるものになるはずである。 また、英国のRaymond Williams Societyの学会誌にRaymond Williamsをめぐる論文が掲載された。 その他、上記の研究書や個別作家の検討については、平成23年12月26日および平成24年2月18日に行われたレイモンド・ウィリアムズ研究会において報告を行った。前者ではDai Smithの著作、後者ではGwyn Thomasの著作を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は基礎研究の年度と位置づけており、成果発表をする予定はなかったが、本研究課題に関連する共著と論文を出版したという点では、当初の計画以上に進展しているといえる。しかし、個別作家の検討という点では対象とする領域の広さゆえにまだ十分に検討が進んでいるとは言えない。それらの点を総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は個別作家の作品や研究書の検討といった文献基礎研究を継続する。同時にウェールズの研究者との学術交流も進める。 具体的には、文献調査については、Gwyn Thomas、Rhys Daviesの作品に注目し、基礎研究を行った上で、その成果を学会発表、論文、著作の形で発表する。スウォンジー大学に所蔵されているRaymond Williamsなどのアーカイヴ調査を行う。平成24年度および平成25年度にはウェールズにおける国際シンポジウムを企画し参加する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額は端数残金である。それを含め、文献研究のための書籍購入およびアーカイヴ調査のための旅費、国際シンポジウム参加のための旅費が主な使途となる。そのほか、文献整理のための電子機器購入、発表原稿の校閲のための謝礼として使用する予定である。
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