2012 Fiscal Year Research-status Report
ウェールズ英語文学研究の基盤創設に向けて―二十世紀小説を中心に
Project/Area Number |
23720136
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
河野 真太郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (30411101)
|
Keywords | イギリス文学 / ウェールズ文学 / 英語文学 |
Research Abstract |
本研究課題の目的である英語ウェールズ文学研究の基礎研究を進めるため、本年度は(1)基礎的な文献研究(2)ウェールズ(スウォンジー大学)でのアーカイヴ調査(3)同大学の研究者との研究者交流と情報交換を行った。 (1)に関しては、ウェールズ英語文学の作品テクストや批評テクストを購入し、それを調査する作業を進めた。特にRaymond Williams、Gwyn Thomasらの作品、Wyn ThomasやDai Smithによる研究書の調査が有益であった。 (2)について、平成24年11月1日にはスウォンジー大学のRaymond Williams Archiveでの調査を行った。このアーカイヴが完成したのは2年ほど前であり、研究代表者がこのアーカイヴを訪問し利用するのは初めてであったが、ウェールズ出身の小説家・批評家のRaymond Williamsの膨大な手稿や書簡などが収められており、さらなる長期間で大規模な調査が必要であることが判明した。 (3)について、平成24年11月2日には、ウェールズのスウォンジー(ディラン・トマス・センター)において、スウォンジー大学のCREW(英語ウェールズ文学研究センター)のメンバーとともに企画したシンポジウムに参加した。このシンポジウムは、Raymond Williamsの著作The Long Revolutionをめぐるものであった。研究代表者は、このシンポジウムにおいて研究発表はしなかったが、発表者の司会、パネルディスカッションへの参加をし、非常に有意義な議論の機会となった。特に、Raymond Williamsを中心とする英語ウェールズ文学におけるリアリズムの重要性について深い議論が行われた。以上、文献研究と研究者交流の二面において非常に有意義な研究を実施できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。本研究課題は、日本においてまだ体系的に研究がなされていない英語ウェールズ文学研究の基礎を築くことを目的に掲げている。その目的を達成するためには、まずはどのような作家がいかなる作品を書いており、日本において紹介するに足るのかを知る必要があり、そのためには基礎的な文献研究が不可欠となる。現在まで、Raymond Williams, Gwyn Thomas, Owen Sheers, Alun Richardsらの作品とそれをめぐる批評の読解を進めている。これらの文献調査がいまだ論文の形はなしておらず、それは本研究課題の今後の課題である。研究の目的に掲げた、ウェールズの研究者との学術交流については、期待以上の進展を見ていると言ってよい。平成24度11月に行った、スウォンジー大学におけるアーカイヴ調査とシンポジウムへの参加においては、Raymond Williamsのアーカイヴでの文献調査だけではなく、現地の英語ウェールズ文学研究者たちとの情報交換を行うことができ、非常に有意義であった。本研究課題の目的達成に向けて、この研究者との交流関係を継続していく必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進んでいるので、文献調査と研究者交流の二側面においてこのまま調査研究を続ける。今後注目したい研究対象としては、Emyr HumphreysやEmlyn Williamsがある。これらの20世紀ウェールズ作家による小説は、一種の教養小説となっており、これを広くイギリスにおける教養小説の系譜と照らし合わせた際に何が見えてくるかを研究する。Raymond WilliamsやGwyn Thomasについての文献研究も継続する。また、平成24年度に訪問・調査したRaymond Williamsのアーカイヴの調査継続、スウォンジー大学の研究者との交流の継続および拡大も行う。研究者交流については、イングランドのノッティンガム大学などを中心とするRaymond Williams協会の研究者との交流も行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|