2013 Fiscal Year Research-status Report
ウェールズ英語文学研究の基盤創設に向けて―二十世紀小説を中心に
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23720136
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
河野 真太郎 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (30411101)
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Keywords | ウェールズ文学 / 英語文学 / レイモンド・ウィリアムズ / エミール・ハンフリーズ / イギリス文学 / エドワード・サイード |
Research Abstract |
平成25度は平成24年度にひきつづき、ウェールズ文学の全体像を探求しながら個別の作品を読み進める作業を進め、かつそれを口頭発表および著書・論文の形で発表した。 研究対象となったのは主に、ウェールズ出身の批評家・作家であるレイモンド・ウィリアムズと、ウェールズの小説家エミール・ハンフリーズである。前者については著書『〈田舎と都会〉の系譜学』において大々的に扱った。この著書では、ウィリアムズがウェールズ出身で地理的並びに階級的な移動を成し遂げた作家であったことが彼の思想と作品において重要な要素となったことを主張し、それを研究書全体の枠組みとした。また、ウィリアムズについては学会発表のひとつ("Exile, Vagrancy, and Cosmopolitan Citizenship?: The Cases of Williams and Said.")において、20世紀を代表するもうひとりの批評家であるエドワード・サイードとの比較を行った。 エミール・ハンフリーズについては、彼の作品を広義の「成長物語」としてとらえ、そのウェールズ的な特性を比較文学的な手法で浮かび上がらせる試みを行った(学会発表"Sons and Friends: Emyr Humphreys and the Novels of Growth in the 1950s")。その際の比較の対象はイングランドのヴァージニア・ウルフ、日本の村上春樹であった。 なお、ウェールズでの海外資料調査を予定していたが、研究代表者の健康上の都合のため取りやめた。これについては「今後の研究の推進方策」で述べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウェールズ英語文学を全体的にとらえるパースペクティヴを獲得するという観点ではまだその途上にあるといわざるを得ないが、平成25年度は著書の刊行および複数の学会発表によって研究成果を発表することができたため、その点では予定以上の進捗を得たといえる。ただし、予定していた作家の作品論に着手することができていない部分があること、またウェールズでの資料調査を行えなかったことなどを鑑みると、おおむね順調に進展しているという評価が妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究を進めてきた作家についてさらに研究を進めつつ、他のウェールズ英語文学作家の研究にも着手する。また、平成26年度は研究最終年度であるため、論文の形での成果発表を積極的に行う。 具体的には、レイモンド・ウィリアムズ研究については、ウィリアムズについての研究書(単著)を準備中である。これについては、平成26年度内に刊行するのは相当に困難であるが、できるだけ進捗させる。 また、エミール・ハンフリーズについての学会発表を、調査研究を進めて論文化し、ウェールズの学会誌に投稿する。これ以外の作家、たとえばグィン・トマスなどについても研究を進める。 平成25年度に行うことができなかった海外(ウェールズ)での資料調査を今年度中に行う。スウォンジー大学に整えられたレイモンド・ウィリアムズのアーカイヴの調査を進める。
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