2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720139
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中川 千帆 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (70452026)
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Keywords | 心霊主義 / リアリズム文学 / ジェンダー / 霊媒 / シェーカー教 |
Research Abstract |
23年度が終わる寸前にリアリズム作家たちによる霊媒の表象と、身体と心理にかかわる論文を国際学会で発表していたが、テキストに書かれたもののみを対象としていたこと、そしてシェーカー教というほぼすでに存在しない宗教団体をキーワードとしていたため、観念的な議論となったことが心残りであった。24年度はその議論を発展させることを目指した。 心霊主義研究においては、文学研究の分野でも歴史学の分野でもシェーカー教に触れたものはほとんどない。よって、シェーカー教をキーワードとした前述の論文はその点において画期的といえるが、上にも述べたように資料の少なさが問題であった。よって24年度の科研費の主な使用用途は、シェーカー教とクリスチャン・サイエンスの実地リサーチとなった。夏に実施したニューハンプシャー州のカンタベリーシェーカー村(歴史保存施設)への訪問では、かつてのシェーカー教徒たちの生活ぶりをうかがうと同時に、その当時の社会におけるシェーカー教の位置、実際の生活状況を知ることができ、先に発表した論文を発展させるヒントを得ることができた。この研修においては、同時期に発展を遂げたクリスチャン・サイエンスの教会や創設者に関する博物館を訪問するとともに、資料収集も行い、心霊主義の流行が生み出した一つの組織化された思考形態に対する理解を深めることもできた。これらを生かして、次年度には発表原稿をもとにした論文を発表する予定である。 また前年度に発表した論文をブラッシュアップして、発表すると同時に、次年度の研究対象の中心となる作家、Hamlin Garlandの資料を積極的に収集して読み進め、新しい論文の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
通常の教育活動や研究活動以外に、2012年度の後半は、特に2013年1月の『クラウド・アトラス』翻訳出版のため、リサーチを行ったシェーカー教やクリスチャン・サイエンスについてまとめる時間を持つことができなかった。実地リサーチを行うことができたのは大きな収益であったが、それらをまとめる作業ができなかったこと、また予定していたHamlin Garlandの研究が基礎的な資料を読むのみにとどまったことから、少なくとも半期分の遅れが認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、本研究の前半部分で中心としてきた心霊主義の研究から、クリスチャン・サイエンスをポイントとする精神性と身体性へのつながりへと少しずつ発展させたいと考えている。25年度の前半には、まずHamlin Garlandの心霊主義小説についての研究を進め、国際学会での発表が予定されている。これは、本研究の前半部分のテーマを掘り下げるものであり、霊媒とそれを取り囲む人たちとの関係がどのように女性性と身体性を問題にしているのか、そしてまた、それが家族という問題と関わってくるのか、それらが心理学的な言説である家族語りと女性の声という側面からどのように切り取ることができるのかを探っていきたい。 その後、Hamlin Garlandの非心霊主義小説にも手を伸ばし、そこにみられる病と精神性の問題を取り上げながらも、より病という主題を正面から捉えている医師作家であったOliver Wendell Holmes (Sr)の作品を取り上げる予定である。時代的には少々遡ることになるが、19世紀後半においてどのように女性性と精神性、病が理解されることになっていったかを知るために重要なキーとなる作家であると考えている。Garland以上にHolmesは(特に私が対象とする作品群は)研究されておらず、資料の入手や研究の進捗には困難が予想されるが、その分、意義のある研究ができるのではないかと考えている。また、以前の科研費研究課題のヴァンパイア研究と重なる部分が出てくることが予想され、今回の研究のみにとどまらない大きな視野を持つ研究となることが期待される。 そこから発展して、Edith Whartonの作品やその他の作品にみられる、病と精神の問題に踏み込んでいきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はまず8月に開催される国際学会に参加する予定である。毎回参加し、発表している国際ゴシック学会は、今回イギリスのサリー大学で開催されるが、それに参加し、研究を発表するとともにその他の研究者からフィードバックを得ることによって、研究を進める大きなヒントとなるだろう。この学会は、いつも近い興味を持つ研究者との出会いと議論のきっかけとなり、自分の研究視座に欠けていたものに気づかせてくれる。同時にアメリカよりも大きな流行を見たロンドンで心霊主義の資料を収集する予定である。特に今年度の研究対象となるHamlin GarlandはThe Society for Psychical Researchのアメリカ協会にて活発な活動を行っていたが、彼が参考とした研究者や資料はほとんどがイギリスのものであり、それらについての資料を得るための貴重な機会となると思われる。 それ以外の研究費の使用用途については、上に述べたようにHolmesの研究資料収集が主となると思われる。しかし、Holmesの著作はほとんどが絶版であり、Garlandの書籍と同様に多くを古書で探さなくてはならないことが予想される。そのためには心霊主義の中心地でもあるが、彼のゆかりの地でもあるボストンへ渡航するなどとして、関連図書をリサーチすることも計画に入れたい。また、Garland研究の進行具合によっては、彼の資料を保管するカリフォルニア州の南カリフォルニア大学でのリサーチを行う可能性もある。
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Research Products
(2 results)