2013 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳研究(トランスレーション・スタディーズ)のアプローチによる英米文学受容研究
Project/Area Number |
23720144
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
佐藤 美希 札幌大学, 地域共創学群, 准教授 (50507209)
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Keywords | 翻訳研究 / 翻訳学 / トランスレーション・スタディーズ / 翻訳文学 / 外国文学受容 / 円本 |
Research Abstract |
平成25年度は、本研究課題の最終年度として、前年度までに参加した学会で発表したそれまでの研究内容へのフィードバックなどに基づき、論文執筆のために研究内容を総括する作業を次のように行った。1.翻訳研究(トランスレーション・スタディーズ)の記述的翻訳研究アプローチを翻訳言説と外国文学受容コンテクストの考察に応用する方法論の整理、および翻訳研究と文学受容研究を接合する有効性の確認、2.円本月報などの翻訳言説資料の再精査とその特徴の明確化、3.こうした翻訳言説の特徴とその時期前後の周辺コンテクスト(特に外国文学研究や翻訳論)との有効な比較の整理、である。 方法論に関しては、従来翻訳テクストを中心的な考察対象とする記述的翻訳研究アプローチを周辺の翻訳言説の考察に援用するとともに、近年翻訳研究で注目されているパラテクスト概念を援用した研究などとも接合することで、文学研究のアプローチとして再構成する可能性を提示することができた。 また、円本月報に見られる翻訳言説を、文芸の大衆化という狙い・その牽引をアカデミズムに担わせる矛盾とも見える意識・翻訳論を含めた出版社側による翻訳への介入という枠組みに整理し直すことで、アカデミズムが主導していた当時の翻訳受容に、大衆化という旗印を巧みに利用しながら出版社側が周到に介入していく様相の一端を明らかにすることができた。さらに、ダムロッシュ(2003)が提唱する世界文学の観点からも、昭和初期の円本にはどのように世界文学を捉えるモードが作用していたのか示唆を得ることもできた。 翻訳研究と文学研究を接合し、文学の翻訳受容を再検討するとともに日本の文学研究の視座拡大を目指すという本研究の目的に照応し、一定の成果を得ることができたと考えている。
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