2011 Fiscal Year Research-status Report
英国大戦間期の主体構築研究――女性作家による戦争自伝伝記文学作品の考察
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23720147
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
松永 典子 駿河台大学, その他部局等, 助教 (00579807)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ジェンダー / 暴力 / 主体 / 性的差異 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ジェンダー体制を利用しながら振るわれる戦争という暴力をとおして、20世紀初頭の英国の「人間の領域」がどのように画定されるのか、を明らかにすることにある。 本研究の初年度として平成23年度は、異国人を切り口に20世紀初頭の英国女性の国民概念および国民意識の形成を明らかにすることに主眼を置いた。とくにフランスのナショナリズムのアイコンであり、また異性装のヒロインでもあるジャンヌ・ダルクの、英国における受容過程を考察することによって、英国女性のナショナル・アイデンティティが歴史的文化的文脈のなかで、人種/ジェンダーの概念に影響されながら、どのようなかたちに構築されていったかをたどった。 本年度の研究成果は国内外における学会において発表した。まず、第一次大戦以前のジャンヌ受容を英国女性参政権運動から分析し、米国The 10th Annual Hawaii International Conference on Arts and Humanitiesにて成果報告をおこなった。次に、第一次大戦以後の表象の変遷については、バーナード・ショーの『聖ジョーン』から明らかにし、早稲田大学ジェンダー研究所の例会にて研究発表をおこなった。本研究については、次年度に論文として公表する予定である。 本年度はまた、次年度に向けて第一次世界大戦の女性従軍者の手記、伝記、回想録等についての調査を着手し、欧州の大戦に関する米国女性の出版物に、有益な文献を発見することができた。これによって次年度以降の研究に向けて新たな視座を獲得が可能となった点で意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においてはおもに3点((1)大戦間期の女性従軍者による、また女性従軍者に関する資料収集、(2)大戦中の女性従軍者の自伝・伝記文学の分析、(3)自伝伝記文学運動とフェミニズムの関係調査)を明らかにすることを目的とした。このうち、前者の二点については上記研究概要に述べたとおり、大部分が達成されたといえる。三点目については、次年度以降も継続しておこなう予定である。 当初の研究計画との変更もあった。2011年3月11日におこった東日本大震災およびその後の計画停電の実施によって、勤務校の学年暦が大幅に変更され、また長期休暇期間が縮小された。そのため、当初予定していた渡英調査が本年度に実施することが難しくなり、次年度に繰り越しすることとなった。ただし、研究を滞らせないために、所属先図書館および国内図書館を通じて英国から資料を取り寄せる調査方法に変更することによって、研究の進ちょくが滞ることを回避した。その結果、当初の予算配分では旅費を中心としていたが、資料収集への予算配分の比重が高くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)資料収集:文学および表象を研究対象とする本研究においては、資料は必須である。平成23年度において文献調査を実施したが、引き続き、本研究をさらに多角的に捉えるために、該当時代の定期購読雑誌などの資料収集をおこなう。2)作品分析:収集した資料をもとに、作品分析をおこなう。3)当該研究の先行研究の調査:国内外の研究者の先行研究を調査し、当該研究の妥当性を高めるとともに、当該研究分野の貢献に尽くす。4)研究成果の発表:平成23年度からの研究成果を、国際学会での口頭発表および所属する学会誌にて論文発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)資料収集:資料を収集するための費用として、国内外の資料館・図書館への旅費、資料複写代に使用する。2)研究成果発表の旅費:研究成果を発表するための学会参加費用に使用する。3)論文執筆のための消耗品等を購入する。4)論文執筆のため英文校正に使用する。
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