2012 Fiscal Year Annual Research Report
英国大戦間期の主体構築研究――女性作家による戦争自伝伝記文学作品の考察
Project/Area Number |
23720147
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松永 典子 帝京大学, 理工学部, 講師 (00579807)
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Keywords | 英文学 / 大戦間期 / ジェンダー / 伝記 |
Research Abstract |
前年度の研究で、大戦間期に発表された自伝および伝記的作品を女性作家を中心に考察した結果、英国国内の女性運動において人種概念が女性の主体構築において重要な影響を与えていることを新たに指摘した。そこで継続性が重要となる女性運動を踏まえて、過去と未来の両者の視点を考察する重要性を認識した。したがって本年度はおもに次の二点を中心に研究をおこなった。第一に、未来が投影されると考えられる少女の自己形成の物語の分析と、第二に、大戦間期からみた過去にあたる第一世界大戦中に国家に奉仕する従軍女性の役割について考察をおこなった。 まず大戦間期の少女像については、少女がフェミニズムのどの点を受容し、その思想を継続したのかを、"Girls' Feminism in the British Interwar Period"と題して、論文として発表した。つぎに、従軍女性のうちとくに看護婦に関する言説・表象が文学作品のなかだけでなく歴史的資料においても定まっていない点に注目し、資料調査をおこない、"Nursing Culture during the Interwar Period in Britain"として口頭発表した。この点については、2012年度内にはまとめられなかったものの、2013年度中に論文執筆をおこなう予定である。さらに前年度に続けてジャンヌ・ダルク表象の研究をつづけ、論文として発表する予定である。ほかに、日本の女性従軍女性の自伝的伝記作品に関する書評を前年度におこなったが、女性運動が国際的であったことを考えると、20世紀初頭の従軍女性表象を多角的に比較検討する必要性を確認することができたと考えられる。これらの研究成果を出すに当たり、英国および国内にておこなった資料調査が大いに役立った。このように、科学研究費助成金によって研究を進展させることができたことに深く感謝する。
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