2011 Fiscal Year Research-status Report
M・G・ヴァッサンジの文学における文化的アイデンティティの問題
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23720156
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小澤 自然 関西大学, 文学部, 准教授 (40361406)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | M・G・ヴァッサンジ / 国際研究者交流 / イギリス、アメリカ合衆国 / A Place Within / ディアスポラ / 旅行文学 |
Research Abstract |
本年度は、三年計画からなる当研究の初年度にあたる。そのため、まずはヴァッサンジの作品を再び精読し、その「二重の文化的転位」というテーマの観点から、これまでの彼の作品の全体像を把握する作業を年度を通じて断続的に行なった。 その作業と並行しながら、本年度はインドとの関係をテーマとした作品についての検討を当初の予定通り進め、特に彼の旅行記『内なる場所―インド再発見』(A Place Within: Rediscovering India [2009])に焦点を絞った。夏季には、イギリスに三週間ほど渡航し、この作品の分析に有効と思われる、インド系の人々のディアスポラの歴史・文学・文化についての資料収集をブリティッシュ・ライブラリーにて行なった。 年度の後半においては、それまでの研究成果を学会での発表原稿にまとめる作業に力を注ぎ、年度をまたいでアメリカ合衆国のジョージタウン大学で開催された国際学会The Politics of Travel: Seventh Conference of the International Studies of Travel Writingにおいて発表した。発表に際しては、研究協力者であるイギリス・エセックス大学のPeter Hulme教授、同大学のJonathan White名誉教授、明治学院大学の小野正嗣専任講師の三氏から貴重な助言を前もっていただき、その一部を発表原稿に盛りこんだ。また学会に参加した研究者の方々からも貴重なフィードバックを頂いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ヴァッサンジとインドの関係をテーマにした作品を研究するのが当初の計画であった。その計画通り、そうした作品のひとつである『内なる場所』についての研究を行ない、その結果を年度末に開催された国際学会で発表できたことは、「おおむね順調に進展している」と評価するに値すると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の計画通り、本年度に学会発表を行なった論文を出版可能なレベルまでリバイズし、完成させることがまずは当面の目標である。 この作業と並行する形で、次年度は当初の計画通り、アフリカとの関係をテーマにした彼の作品『ヴィクラム・ラルの狭間の世界』(The In-between World of Vikram Lall [2003])についての研究を行なっていく予定である。研究に際しては、この作品がケニアの独立とその後のネオ・コロニアリズムによる混乱をテーマとしているため、歴史的な知見は不可欠であると考える。そのため、夏季にイギリスに二週間程度渡航し、資料収集を行なう予定である。その作業を踏まえた上で、この作品についての英語論文を執筆していく。執筆に際しては、もし可能であれば海外での学会発表を行ない、そこで得たフィードバックを踏まえた上で、年度内中にほぼ論文を完成させたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず次年度への繰越金206,120円は、報告書にも記載した国際学会Politics of Travelが年度をまたいで開催されたため、必要費用を次年度予算から一括して支出する必要から生じたものである。次に次年度の研究費についてであるが、上にも述べたとおり、次年度の研究にあたっては海外での資料収集が不可欠であると考えられる。そのため、次年度の研究費の大半は、夏季に予定しているイギリスでの資料収集に使用する計画である。
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