2011 Fiscal Year Research-status Report
英国における「コリンナ」の系譜と女性セレブリティに関する研究
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23720157
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
皆本 智美 摂南大学, 外国語学部, 准教授 (20441107)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 英米文学 / ブロンテ / コリンナ |
Research Abstract |
本研究の主な目的は、フランスのスタール夫人の小説『コリンナ』に対し、英国作家が示した様々な反応を読み解くことによって、英国ナショナリズム形成の様相の一端を明らかにすることである。平成23年度は、スタール夫人と『コリンナ』に関する文献のほか、ブロンテ姉妹とブランウェル・ブロンテに関する文献を収集・調査し、基本的知識を整理することができた。収集した文献を整理・調査する中で、いかに英国作家が英国人と大陸の国民との相違・相同を意識し、後者から前者を差別化していったかについて、(1)ジェンダー、(2)文学と絵画の関係という二つのキー・ワードを軸に分析を試みた。本年度は、(1)に注目して、フェリシア・へマンズやレティシア・ランドン等、直接的に『コリンナ』の影響を受けた作家研究を行う予定であったが、便宜上、以前から継続中のブロンテに関する研究から先に着手し、(2)文学と絵画の関係という観点から、ブランウェル・ブロンテの詩作品についての研究成果を発表した。ブランウェルの姉妹については、彼女達がベルギーのブリュッセルに留学した体験から、大陸の影響を作品中に探る研究が行われているが、ブランウェルに関する大陸文化の影響はこれまで指摘されてこなかった。本研究では、一時は画家を志していたブランウェルがイタリア等大陸の画家の巨匠から絵画の技法を学び、絵画の技法を詩という文学作品に応用している可能性を指摘し、その研究成果を、日本ブロンテ協会全国大会シンポジウムにて「 'Caroline' をめぐって」という題で発表し、Setsunan Journal of English Education 第6号に「ブランウェル・ブロンテの『キャロライン』」という題で掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は『コリンナ』に関する資料・文献を収集し、整理しながら、入手したものから分析を行う計画だったが、『コリンナ』から直接的影響を受けた作家より先に、ブランウェル・ブロンテを中心として、ブロンテ家が大陸文化から受けた影響を探る研究を行った。研究対象の順番に変更が生じたものの、本研究に必要な基本資料を入手し、分析を行って、その研究成果の一端を発表できたことから、おおむね当初の計画進度に準拠していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度はブランウェル・ブロンテを中心としたブロンテ研究が主たる研究内容だったが、平成24年度は『コリンナ』から直接的な影響を受けた英国作家に焦点を当てて研究を行う。具体的にはフェリシア・へマンズ、レティシア・ランドン、ジューズベリー姉妹等が研究対象となるが、本研究に必要な資料のうち未入手のものがあるので、それらを入手し、分析を進めて、その結果を学会にて発表する。ブランウェル・ブロンテについて研究を進める中で、英国作家が大陸文化から影響を受けた際、文学と絵画の間に密接なつながりがあることが判明したので、今後の研究において、両芸術形態の結び付きにも留意して研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度と同様に、まず日本において本研究に必要な文献・資料を調査し、取り寄せることが可能なものについては取り寄せ、現地調査が必要なものについては現地に赴いて調査を行う。資料収集のため渡欧が必要な可能性も考えられるが、平成24年度は勤務校で夏季海外実習引率業務を担当しなければならないため、海外渡航が必要な場合は、平成25年2月から3月にかけての春期休暇中に行い、資料収集費用と渡航に必要な旅費に本研究費を充当する予定である。
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