2012 Fiscal Year Research-status Report
文学批評再読による1960年代英国文化論-「モダニゼィション」による社会の消失
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23720158
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大貫 隆史 関西学院大学, 商学部, 准教授 (40404800)
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Keywords | 英文学 / 文学批評 / 文化論 / イングランド:ウェールズ / 社会 / 近代化論 |
Research Abstract |
本研究課題「文学批評再読による1960年代英国文化論-「モダニゼィション」による社会の消失」は、イギリスの文学批評を新たな角度から再読することで、1960年代英国文化論見直しの端緒をつけることを目的としている。この目的を遂行するために、以下の二つの方法論を採用している。1、従来の英国文化論において、1960年代は若者や学生の反乱など、社会への「反抗」の季節と解されてきたが、この時代を社会の「消失」という異なる観点から考察する。2、1960年代文化は、いわゆる「ポストモダン(脱近代)」時代の先駆とみなされることが多いが、これを、文学批評における「モダン」論ならびに政治的言説における「モダニゼィション」論という観点から、再解釈する。また、本研究課題が収集並びに分析すべきものとして、「一、1960 年代の文学批評及び政治的言説」、「二、R・ウィリアムズの1960 年代文化論」、「三、1960 年代のウェールズ文学・文化」関連資料が挙げられる。 二年目にあたる本年度(平成24年度)は、一、二、三の資料の収集と分析を継続的に進めつつ、また、初年度(平成23年度)の研究進展に伴い必要性が生じてきた、1960年代に至るまでの英国文化論の系譜の解明に必要となる資料の収集と分析も並行して行った。 その成果の一部として、1960年代英国文化を形成した重要な前史としての、1950年代の文学批評と政治的言説の重なり合いを考察した論文を公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題二年目にあたる本年度(平成24年度)の重点的目標は以下の通りである。1.初年度に引き続き、英国文学批評、レイモンド・ウィリアムズの文化論、およびウェールズ文学・文化に関連する資料の収集と分析を行うこと。2.その前史も含めた、1960年代の文学批評及び政治的言説の読解および分析と、その成果公表。 1については、おおむね順調に入手と分析を進めた。また、2については、その成果の一部を、平成24年12月発行の論文において公表済みである。同論文では、ブレヒト(ドイツの演劇人)再発見に沸くイギリスの文学批評と、同時期の政治的言説が、ポピュラー・ポリティクス(分かりやすい「政治」)という点において同一の平面上に存在していることを論じている。その上で、レイモンド・ウィリアムズの文化論が、その両者とは異なる位相を持つことを、「二重視(double vision)」というキーワードを軸にしながら明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成25年度では、平成23年度および24年度での資料分析、ならびに公表した論文で得られた知見を踏まえ、1960年代の英国文化論における、支配的な思潮ならびに勃興的な思潮を浮き彫りにすることを目指す。その際、初年度および二年度目の研究が、支配的思潮の解明に重点を置いてきたことを鑑み、最終年度では、勃興的な思潮の解明に力点を置くものとする。この作業を進める上で重要になってくるのが、ウェールズの文化と文学であり、最終年度では、その成果については、ウェールズ文学・文化の専門家が同席する場での口頭報告を目指すものとし、研究代表者が主催するセミナー等に専門家(海外からの専門家もあり得る)を招聘する可能性も含め、柔軟に研究を推進するものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)