2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720171
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鳥山 祐介 千葉大学, 文学部, 准教授 (40466694)
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Keywords | ロシア文学 / 西洋史 / 美学 / ロシア / 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成24年度までに行った研究成果を発展させ、歴史学の成果を参照しつつ、ロシアにおける地理認識の変化の系譜を探った。その際、前年度より、近代ロシア文化の一つの転機となったナポレオン戦争期の文学作品や雑誌記事に注目していたが、その中で、1812年のフランス軍侵攻時にモスクワからの疎開をはじめとして人の移動が大規模に行われた事実に行き当たり、ロシアにおける地理認識の変容につながる条件として集中的に探究した。 平成25年9月には、モスクワのロシア国立図書館で資料収集を行い、上記の問題に関連する文献を多く収集した。その一つの成果として、19世紀初頭のロシアを代表する寓話作家イワン・クルイロフによる、1812年のモスクワからの疎開を題材とした作品『鴉と鶏』に着目した論文、「巣箱から飛立つ蜜蜂の群れのように:クルイロフの寓話詩『鴉と鶏』と1812年のモスクワ」を発表した。この研究を通じ、当初否定的に意味づけされていたモスクワからの疎開という行為が、「愛国的」な好ましい行為として再解釈されていった点を明らかにした。この問題への理解をより深めるべく、近現代ロシア文化におけるナポレオン戦争の記憶をめぐる論文を現在執筆中である。空間移動という行為に対するこのような意識の変化が、当時モスクワから多くの人々が疎開した、ヴォルガ川沿岸をはじめとする多くのロシアの地方都市に対する眼差しをどのように変容させたかという点が今後の課題となる。 なお、年度末には、平成24年度に他経費の援助を受けて執筆した論文「イズマイロフ『南ロシアへの旅』に描かれたウクライナ」が刊行された。この研究は本研究と問題意識の一部を共有しており、本研究の成果が反映している。
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Research Products
(2 results)