2012 Fiscal Year Research-status Report
19世紀フランスの中等教育―規範の変遷と文学の生成
Project/Area Number |
23720173
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
畠山 達 日本大学, 法学部, 助教 (10600752)
|
Keywords | ボードレール / 修辞学 / 教育史 |
Research Abstract |
昨年度は前年度に引き続き、Ad usum Delphini叢書及び、Ad usum scholarum叢書に関する研究を続けた。正典の成立に関する資料は膨大で日本では入手不能なものもあるため、その収集作業と整理にかなりの時間を要した。しかし、この種の研究は未着手な面も多く資料渉猟が非常に重要であるため、堅実かつ有意義な研究が行われていると判断できる。 2012年6月3日、東京大学にて開催された日本フランス語フランス文学会の春季大会にて「レトリック教育史研究と文学研究」というワークショップの発表者の1人として参加した。その際、フランス19世紀、特に7月王政期の中等教育の具体的な内容、そしてその教育内容と詩人シャルル・ボードレールとの関連について発表することができた。 さらに2013年7月15日には、日仏会館で開催された、人文社会系若手研究者セミナーにおいては「19世紀の中等教育と文学-ボードレールを中心に」という題にて発表を行った。当時普及していた教科書に掲載されており、正典と認められていたラシーヌの作品『アタリー』とボードレールの詩篇「吸血鬼の変身」との関連を明らかにすると同時に、今まで看過されてきたボードレールの作品にみられる重要な修辞学的側面を提示することができた。その後、夏にフランス国立図書館へ出張することができ、この発表では未確認であった事項も調査することができたのは大きな収穫である。 さらに、2012年9月に発行された『桜文論叢』83巻に「日本のボードレール受容ーアカデミズムにおける地位の確立まで」という論文を発表した。ここでは、特に日本のアカデミズムの受容に着目し、ボードレールの作品がなぜ、どのようにしてフランス文学の正典としての地位を確立できたのか検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ad usum Delphini叢書及び、Ad usum scholarum叢書の精査、また19世紀の視学の報告書等の資料公開はやや遅れている。扱うべき資料の量が膨大であること、研究にまとまった時間をあてることができなかったこと、そしてラテン語の問題が大きく影響している。さらに夏期にフランス国立図書館ではある程度資料の収集を行うことができたものの、学務等のために滞在期間が短く期待したほどの効果をあげることができなかった。 しかし、当初の研究目的とした、中等教育が文学に果たした役割の検討、および19世紀における正典の内容および詩法についての研究はおおむね順調に進んでいる。一年目と二年目に予定していた研究はやや遅れているが、三年目と四年目に予定していた論文の刊行や学会での発表は予定通りで、全体的な研究は着実に進んでいると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度人文社会系若手研究者セミナーにて行った口頭発表をより掘り下げ、ラシーヌの『アタリー』とボードレールの「吸血鬼の変身」との関連、そしてボードレールの詩にみられる修辞学的側面を明らかにする論文を2013年9月に発表する予定である。 2013年の夏には、パリの国立図書館と国立古文書間にて最終的な調査を行い、その場で資料収集は一度打ち切り、その報告として、19世紀にいたる正典の成立に関する論文を2014年1月下旬に発表する。 その間、2013年9月7日と8日に中央大学で開催予定の国際シンポジウムにて、フランス詩法の変遷とボードレールの詩に見る修辞学的側面について発表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(4 results)