2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720176
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 恵子 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (10600223)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
平成23年度は、補助事業期間の初年度だったため、消耗品等の購入と並行して、当該研究に至急必要と思われる資料の所有の有無、所有していない場合はその資料の所在の確認、参照すべきかどうかの重要性の度合といった諸々の観点を含めて徹底的な見直しを行うと同時に、併せて必須資料の迅速な入手に努めた。主に、亡命ロシア詩人ヨシフ・ブロツキイや亡命ロシア作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンを中心とするロシア文学・ロシア思想関連の資料を優先的に探索することから始めたのだが、北大図書館の改修工事のため、資料の一部が入手はおろか閲覧すらできず、研究計画の遂行順序を一部差し替えることになったため、アメリカ文学(特に20世紀アメリカ詩)およびアメリカ文化全般についての資料も、同時に探索・入手を進める結果となった。 具体的には、平成24年3月中旬に札幌に滞在し、北海道大学附属図書館、同大学文学部図書館、同大学スラブ研究センター附属図書室において、亡命ロシア文学関連の資料を集中的かつ体系的に収集した(ただし、前述したように、必要な資料の全てを入手できたわけではないので、補助事業期間中に再度札幌に赴く予定である)。その他にも、年度全体を通じて、関連する書籍および学位論文等の購入を行った。 研究成果としては、論文「ヨシフ・ブロツキイの自己翻訳について―長編詩『ローマ・エレジー』をめぐる一考察」を発表した。そこでは、単に翻訳上かつ詩学上の問題点のみならず、第6章に「『新アメリカ人』の視点」という章を設けて、亡命後のブロツキイの作品世界において、ブロツキイがいかに「アメリカ的」な観点から自己の作品を英訳するにあたり改変したかという点を論じ、亡命ロシア詩人とアメリカ性の受容の問題について、一石を投じることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究実施計画においては、先に「第一の観点:ブロツキイのアメリカ文化受容の特色と、ソルジェニーツィンとの比較」について研究を進め、それに続いて「ブロツキイの詩学におけるアメリカ詩の影響」の研究に着手するという計画だった。しかし、亡命ロシア文学研究に必須となる日本有数の資料を蔵する北海道大学附属図書館が平成23年度から大規模な改修工事を行っているため(平成24年度秋まで継続する予定)、平成24年3月に行った出張時点においても、閲覧すら不可能な資料が多数存在した(欧米の学位論文、新聞等)。したがって、「第一の観点」の研究は半ばで頓挫し、「第二の観点」の研究に、年度途中から切り替えたため、研究の進行具合はやや遅れているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
北大附属図書館の改修工事が平成24年秋に終了するまでは、「第一の観点:ブロツキイのアメリカ文化受容の特色と、ソルジェニーツィンとの比較」について本格的に着手することができないため、「第二の観点:ブロツキイの詩学におけるアメリカ詩の影響」の研究を優先し(アメリカ文学に関する資料であれば首都圏の各大学・公立図書館に多数資料が存在する)、平成24年10月に開催される予定の日本ロシア文学会全国大会において、研究発表する。 また、ブロツキイがアメリカ詩の影響を受けたのは、亡命前のソ連時代からであるため、平成24年度中にサンクトペテルブルグのロシア国立図書館におけるブロツキイのアーカイヴにアクセスして、手稿等の調査を行う。その結果を踏まえて、平成25年度中にアメリカ・イェール大学において資料収集を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、引き続き必要な資料の収集に努めると共に、平成24年10月に同志社大学(京都府)で開催される予定の日本ロシア文学会において口頭発表を行うため、その準備や旅費等に使用する。 また、ロシアのサンクトペテルブルグで2週間程度、資料の収集等を行うため、このロシア出張に研究費の大半を使用することになる。
|
Research Products
(1 results)