2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720176
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 恵子 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (10600223)
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成24年度は、初年度である平成23年度にひき続いて、亡命ロシア詩人ヨシフ・ブロツキイおよび亡命ロシア作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンを中心とした国内外の資料の探索と入手を行った。 また、平成23年度実施状況報告書に記述したように、資料入手の都合上、平成24年度は研究実施計画における「第二の観点:ブロツキイの詩学におけるアメリカ詩の影響」の研究を優先して遂行したが、その成果の一つとして、平成24年10月に同志社大学において、「ヨシフ・ブロツキイとロバート・フロスト」と題する学会発表を行うことができた。これは、ソ連出身で戦後世代の青年ブロツキイに、冷戦時代は政治的に激しく対立していたはずのアメリカ合衆国の現代詩人フロストの作品が(フロスト自身はブロツキイより60歳ほど年長)、いかに根源的な影響を与えたかという問題を具体的に検証したものである。 更に、年度後半は、「平成24年度東京大学学術成果刊行助成制度」の補助金を受けることが9月に決定したため、年度内に亡命ロシア文学に関する著作『廃墟のテクスト――亡命詩人ヨシフ・ブロツキイと現代』を出版することができた(平成25年3月刊行)。この著作は、本邦で初めて上梓されたブロツキイ研究書であるだけではない。本書の第3章「眩惑するアメリカ――ブロツキイの移住から同化まで」では、主としてブロツキイの伝記的側面に依拠しつつ、ソ連出身のロシア語詩人がアメリカに亡命して創作活動を行った場合の、ポジティヴな面とネガティヴな面に等しく焦点を合わせてみた。これにより、ロシア出身の亡命文学者がいかにアメリカ性を獲得していったかを、多面的に捉えなおす端緒を示すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画の「第二の観点:ブロツキイの詩学におけるアメリカ詩の影響」については、前述の学会発表「ヨシフ・ブロツキイとロバート・フロスト」として、一部成果をあげることができた(現在、論文化のため執筆中である)。 しかし、「第一の観点:ブロツキイのアメリカ文化受容の特色と、ソルジェニーツィンとの比較」の研究は、順調に進んでいるとは言い難い。なぜなら、平成24年度前半は学会発表の準備に費やされただけでなく、後半に予定していた資料収集のための海外出張も全く遂行できなかったからである。というのも、前述した著作『廃墟のテクスト』の出版準備作業(平成24年9月から平成25年3月まで、入稿・初校・再校・引用部分の原典チェック、転載写真の著作権交渉などに忙殺された)のために、日本を長期的に離れることが事実上不可能だったからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度実施状況報告書で言及した北海道大学附属図書館の大規模な改修工事は平成24年秋に終了したが、報告者とってはホームライブラリ(東京大学文学部図書館)を通じて必要な文献(図書)が取り寄せ可能となったため、再度北大に出張する必要はなくなった(取り寄せが不可能な欧米論文や新聞などは、海外の図書館の方が充実した所蔵を行っているため。海外出張の際にまとめて収集するものとする)。 したがって、平成25年度中に、これまで実施できなかったロシア出張(主にサンクトペテルブルグ、必要があればモスクワ)およびアメリカ出張を迅速に行った上で、なるべく早い時期に研究成果を公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、夏に1~2週間程度、ロシアのサンクトペテルブルグに滞在して(ただし、G20サミット期間は避けるものとする)、ロシア国立図書館におけるブロツキイのアーカイヴを調査する。 また、2~3月頃にアメリカ合衆国に1~2週間程度滞在して、主にイェール大学(コネティカット州ニューヘイヴン)のバイネキー図書館にて資料の収集を行う。 この二つの出張旅行に、研究費の大半を費やす予定である。
|
Research Products
(2 results)