2011 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半イタリアにおける短詩形:異国趣味と前衛のはざまで
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23720178
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
土肥 秀行 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 講師 (40334271)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / イタリア / ボローニャ |
Research Abstract |
詩人パウンドと前衛の関係についての2011年8-9月の調査(ヴェネツィア、ロンドン)を経て、論文「初期ウンガレッティと20世紀の短詩形」(「イタリア学会誌」、第61号、2011年10月、pp. 195-216)の論拠を強固にすることができた。これまでの研究で明らかにされていた以上に、パウンドとイタリア未来派(ひいては20世紀初頭のイタリアの詩人)の関係が確認できたからである。また2011年11月にボローニャで行った、初の単著L'esperienza friulana di Pasoliniについての講演会での議論(研究協力者でもある、ボローニャ大学イタリア文学科ロレンツィーニ教授、コランジェロ講師らと)によって、「サンドロ・ペンナの短詩形-須賀敦子が最後に訳した詩人」(「和田忠彦先生還暦記念論文集」、2012年3月, pp. 237-245)の構想を固め、内容を豊かにすることができた。20世紀イタリア詩人のなかでペンナの再評価は図られるべきであり、しかも彼の短詩こそが本質的であるという点が確認できたからである。これら2本の論文は日本語で書かれているが、伊語要旨を研究協力者に提供し、さらなる助言をいただき、当研究の目的としていたイタリアにおける短詩形の類型化が進められた。日本詩からの影響については、詩人ダヌンツィオが第一の鍵となるため、ダヌンツィオの日本文化受容と日本での受容の二方向からデータ収集と整理を行った。ダヌンツィオと組となる下位春吉については瓜生鐡二氏、藤岡寛己氏の研究が新たな発見をもたらし、あらためてアクチュアリティのあるテーマを扱っている自覚を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始以前より書き始めていた部分も含む2本の論文が発表できたことが、なにより予定以上の研究の進捗度を示している。研究の目的の最重要因子として、「前衛」、「短詩形」、「異国趣味」を挙げたが、それぞれについてバランスよく調査・整理ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目は日伊両国において研究発表の場(シンポジウム、論集)を積極的に設けていく。目玉は2012年12月に予定される下位春吉シンポジウムであろう(於静岡文化芸術大学)。このテーマでの世界初の試みとなる。ボローニャ大学では11月に、20世紀の詩形についてのワークショップが予定されている。インターネットの環境を使って、参加者が自由に議論できるフォーラムも計画している(ボローニャ大学の技術を使用)。2012年11月に来日予定のボローニャ大学講師マッテオ・カザーリ氏ともイタリアのジャポニスムについて意見交換を期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イタリア未来派と詩人ウンガレッティがパリで頼りにしていた詩人アポリネールについて調査を行う(2012年8-9月にパリで一週間程度)。また下位春吉についての資料をナポリに参照しに行く(2012年8-9月に一週間程度)。計2週間の海外調査となる。これらの成果は12月の下位についてのシンポジウムで利用したいと考える。またパゾリーニ生誕90周年のシンポジウム(イタリア北部)に参加希望しており、生前は未発表であった作品(日本文学からの翻訳など)を中心に論じる予定である(一週間程度の出張)。また夏には栃木県の倉庫においてある大量の資料を浜松に移動し、整理を行う。これまでのイタリア詩研究について整理する機会となる。運賃と、整理補助の謝金が必要である。
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Research Products
(3 results)