2012 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半イタリアにおける短詩形:異国趣味と前衛のはざまで
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23720178
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
土肥 秀行 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 准教授 (40334271)
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Keywords | 国際情報交換 / イタリア / ナポリ |
Research Abstract |
現代イタリア詩への短詩形の導入に大きな役割を果たした下位春吉について、2012年9月にナポリ国立図書館にて調査を行った。ゲラルド・マローネ文庫に収められている資料が検討対象である。 「研究実施計画」に記したように、「アウトプット」の年度となるよう、土肥の企画運営によりシンポジウム「ファシズムと文学―下位春吉をめぐって」(2012/12/14、於静岡文化芸術大学)を催し、上述の調査結果をふまえ「下位春吉とゲラルド・マローネ-ナポリにおける文学的交歓」との発表を行った。前年度に新たな示唆を得た研究の主、藤岡寛己氏を招待し、ナポリの前衛に影響を与えた下位の政治性について議論した。 次いで2013年2月にナポリ国立図書館とローマ大学で調査を続け、シンポジウムでの報告をもとにした論考を仕上げ、『イタリア図書』(2013/4号)に掲載した(招待あり)。 2012年10月に静岡文化芸術大学での演劇フォーラムに参加したマッテオ・カザーリ氏とは、地域によって異なるイタリアの日本趣味について意見交換をした。 2012年9月パリでの詩人アポリネールについての調査(ジャック・ドゥーセ文学資料館)では、彼と美術界(ミラノとパリの未来派)との深い関わりが確認できたが、ナポリのマローネあるいはウンガレッティとの連帯について今後も継続して調査を続ける。 「研究目的」にある、短詩形を受容したイタリア前衛詩人の「政治度」については、2度のナポリでの調査のうち、アポッローニア・ストリアーノ氏との情報交換と議論により、1920年代のファシズム運動との距離を測ることが重要であることが分かってきた。ナポリ文人サークルのリーダーで下位の友人であるゲラルド・マローネ主宰の政治雑誌Il Saggiatore (1924-25)についてのストリアーノ氏の新たな研究が鍵となる。氏との協力体制を今後活発化させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内シンポジウム「ファシズムと文学―下位春吉をめぐって」(2012/12/14、於静岡文化芸術大学)を開催できたのが研究の進捗にとって大きなプラスとなった。研究者交流のために、藤岡寛己氏と大内紀彦氏を招待し、お互いの発表を交えて議論することができた。また報告集を、『イタリア図書』(2013/4号)の特集としてまとめることができた(招待あり)。このように国内における共同研究が順調に進んでいる。ナポリ国立図書館(2回)、ローマ大学での調査は、二都市に分散しているマローネ文庫を包括的にとらえる機会となった。こうしてイタリアとヨーロッパの前衛の連帯についての理解が深まってきたのは大きな収穫である。
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Strategy for Future Research Activity |
アポリネールとマローネの連帯についてさらに知るには、マローネ文庫の空白を埋める必要がある。ナポリとローマに収められている以外の資料を、ブエノスアイレスで探す必要がある。日本とイタリアから、彼地の保存状況について情報を集めているところである。それを踏まえ、ブエノスアイレスに調査に行く予定である。 2013年10月のイタリア学会大会においてゲラルド・マローネの文学的かつ政治的役割について発表を行うよう計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ゲラルド・マローネについてのスペイン語書籍・資料を収集し、2014年2月に2週間程度のブエノスアイレスでの調査を予定している(ブエノスアイレス大学文学部、ダンテ協会図書室が対象)。2013年10月にはイタリア学会大会(於富山大学)で発表予定である。
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Research Products
(5 results)