2013 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランスにおける博物学の興隆と描写詩―ビュフォン受容の問題を中心に
Project/Area Number |
23720180
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井上 櫻子 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (10422908)
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Keywords | 仏文学 / 哲学 / 美学 |
Research Abstract |
平成25年度は、前年度までの研究成果を踏まえつつ、おもにジャン=フランソワ・ド・サン=ランベールの『四季』第二歌「夏」の分析を集中的に行った。より具体的には詩人が第二歌において、夏の自然を描写したり、酷暑における人間の感受性の働きについて考察したりする際、『百科全書』に展開される感覚論的人間論からどのような影響を受けているか検討した。そしてその結果を大学紀要に発表した(論文タイトル「サン=ランベールの『四季』と『百科全書』―第二歌「夏」についての一考察―」)。さらにこの歌に織り込まれた動物の描写に見受けられる博物学的著作の影響に関する考察にも着手した。この問題については今後継続的に検討を続け、その成果をできるだけ早く論文にまとめて発表したい。 また、これと並行してサン=ランベールの『四季』批評校訂版作成作業を進めた。サン=ランベールは1769年に『四季』初版を発表した後も、30年近くにわたってこの作品に加筆、修正をほどこしつづけた。その過程についてはフランス本国でもこれまで全く研究がなされてこなかったため、本研究課題の研究代表者は、博士論文執筆時より『四季』のヴァリアントに関する研究を継続して行ってきたが、平成25年度はその成果をまとめると同時に、この作品の典拠についての調査も行った。『四季』のヴァリアントおよび典拠に関する研究を進めるにあたり、夏期休暇中、および春期休暇中にフランス国立図書館にて『四季』出版に関するさまざまな資料の収集を行った。また、この作業を進める上で特にパリ=ソルボンヌ(パリ第4)大学名誉教授シルヴァン・ムナン氏と意見交換を行い、同氏から貴重なアドバイスを受けることができた。その成果は近く公開し、18世紀フランス文学研究に新たな知見をもたらしたい。
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