2011 Fiscal Year Research-status Report
マラルメと象徴主義を中心とする無意識の詩学の生成とその展開
Project/Area Number |
23720181
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
熊谷 謙介 神奈川大学, 外国語学部, 助教 (20583438)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際情報交流:フランス、ベルギー / 自然 / 哲学 / 精神分析 / 美学 / 社会思想 / 他者 / 世紀末 |
Research Abstract |
本年度はまず研究の見取図を示す論文「ルドン、ラフォルグ、マラルメ―無意識の美学」を発表し、象徴主義文学・芸術を代表する三者を生物学や心理学という新奇な観点から論じた。また、世紀末芸術の特権的形象とも言うべきサロメを、ジェンダーやダンサーの身体性の観点から分析することで、女性が無意識とどのように結びつけられてきたか、そして女性芸術家がそれをどのように自らの美学としたかについて考察した(「踊る女の両義性-ロイ・フラー『サロメ』を中心に」(『〈悪女〉と〈良女〉の身体表象』所収))。そして、モダニズムの父とされるマラルメとセザンヌを、自然の観点から分析することで、技巧の限りを尽くす抽象芸術とみられがちな両者の作品が、実は自然や無意識を背景に成り立っていたことを示した(「自然が与えるモデルニテ-セザンヌとマラルメ」)。 「マラルメの無意識の詩学の解明、そして象徴主義文学者・芸術家によるその展開」を捉えるという本研究全体の目的から見て、本年度は文学に隣接する芸術分野の考察が中心であった。しかし、文学固有の無意識の問題についても、海外出張などにより現地で収集された貴重な資料の読解を進めており、次年度にはメーテルランクといったベルギー象徴派論や、マラルメの弟子に当たるジイドやヴァレリーの初期作品分析などを発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀末のフランスにおける無意識の美学について、本年度はとりわけ絵画芸術や舞踊芸術における分析が進んだ。文学作品を論じることは少なかったが、その読解は進んでおり、研究全体の進捗に支障はないと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
文学作品の分析を進めるため、フランス国立図書館のデジタル資料や東京大学図書館所蔵資料から取り出されたデータの解析という比較的手の付けやすい場所から始める。また、マラルメの詩作品についての重要な研究が二つ発表され反響を呼んでいることを鑑みて、それらに対して仏語論文によって応答することを急ぎたい。また全体の総合を待って論文発表するのではなく、作家や作品についての各論を積み上げることを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様、物品費を世紀転換期の作品やそれについての研究書の購入に充てるとともに、フランスへの海外出張によって現地の図書館等でしかアクセスできない文書を筆写し、貴重な資料を収集する予定である。
|