2012 Fiscal Year Research-status Report
マラルメと象徴主義を中心とする無意識の詩学の生成とその展開
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23720181
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
熊谷 謙介 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (20583438)
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Keywords | 国際情報交換:フランス、ベルギー / 自然 / 哲学 / 精神分析 / 美学 / 社会思想 / 他者 / 世紀末 |
Research Abstract |
本年度の主要な研究としては、数年来主要な研究対象としてきたマラルメの最晩年の作品『賽の一振り』を、女性という新奇な観点から論じたものが挙げられる(「偶然と女―マラルメ『賽の一振り』分析」)。この論文においては、2011年に発表され大きな反響を呼んでいるマラルメ研究である、カンタン・メイヤスー『〈数〉とセイレーン-マラルメ『賽の一振り』の解読』に対して、日本で初めての応答を試みたものである。またそれに付随して、現代音楽の代表者であるジョン・ケージとマラルメの比較にも取り組み、世紀末芸術の現代芸術への遺産という点を示すことができたように思われる(「マラルメの星座、ケージの星群」)。また、マラルメから多大な影響を受けた文学者・思想家ブランショのイメージの問題を扱った著作『文学のミニマル・イメージ』について、マラルメ研究者という立場から書評を執筆した(「「イマージュ」から「イメージ」へ-郷原佳以『文学のミニマル・イメージ-モーリス・ブランショ論』書評」)。 マラルメの無意識の詩学の解明、そして象徴主義文学者・芸術家によるその展開を捉えるという本研究全体の目的から見て、本年度は19世紀末とは異なる時代の文学者・芸術家との比較が中心であった。しかし、世紀末固有の問題についても資料の読解等を進めており、2012年度3月においてフランス・ベルギー海外出張をし、現地での取材を含みつつ、次年度にはメーテルランクといったベルギー象徴派を、無意識という観点から論じる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀末のフランスにおける無意識の美学について、本年度はとりわけ20世紀の文学・芸術思潮との比較をすることができた。同時代の文学作品を論じることは少なかったが、その読解は進んでおり、研究全体の進捗に支障はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
文学作品の分析を進めるため、フランス国立図書館のデジタル資料や東京大学図書館所蔵資料から取り出されたデータの解析という比較的手の付けやすい場所から始める。また、また全体の総合を待って論文発表するのではなく、作家や作品についての各論を積み上げることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費を効率的に使用したため、2012年度に残額が生じた。2013年度に物品費(社会思想史関係書籍代)として使用する予定である。
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