2014 Fiscal Year Annual Research Report
マラルメと象徴主義を中心とする無意識の詩学の生成とその展開
Project/Area Number |
23720181
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
熊谷 謙介 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (20583438)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換:フランス、ベルギー / 自然 / 哲学 / 精神分析 / 美学 / 社会思想 / 他者 / 世紀末 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要な研究としては、マラルメの未完の作品『アナトールの墓』を分析した論文「マラルメの「喪の日記」?-『アナトールの墓』分析」が挙げられる。「書物」のプロジェクトの父子間の継承、喪の時間、父母による息子の死のとらえ方の違いという三つの視点から、マラルメの無意識を指す「自己」という概念が、先祖から子孫に伝わる遺伝的要素に特徴づけられているという、新しい論点を提出した。30000字を超えるこの論文は、研究課題「マラルメと象徴主義を中心とする無意識の詩学の生成とその展開」に対する一つの答えを示す論文であるとともに、今後、象徴主義の時代の他の詩人・作家・芸術家の「無意識」の概念を考察するうえでの基盤となる論文であると考えている。 また前年度に引き続き、世紀末の知られざる女性作家ラシルドの読解・翻訳を進め、『自然を逸する者たち』の抄訳と「アンティノウスの死」の全訳を、『古典BL小説集』(笠間千浪編、平凡社ライブラリー)に発表した(発行は2015年5月)。両方の作品とも男性の同性愛を描く、現代の視点から言えば「BL」の元祖とも言える作品であり、ラシルドを現代日本の文化現象の一潮流との関連から紹介する形となった。また、無意識をジェンダーや「自然」との関係から考察するための土台となる作品を、翻訳できたように思う。 論文という形にはいまだ至っていないが、文学とは別の枠組みで世紀末の時代を生き、無意識の表象を提示していた芸術運動や美術批評について、読解を進めた。これについては、本研究課題を引き継ぐ研究課題「美術批評から見たフランス象徴主義の言説の場の再編成」(若手研究(B)、2015年-2018年)によって、成果を発表していく予定である。
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