2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720183
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Research Institution | Kagoshima Prefectural College |
Principal Investigator |
中谷 彩一郎 鹿児島県立短期大学, 文学科, 准教授 (30527883)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ダフニスとクロエー / 古代ギリシア恋愛小説 / 牧歌 / 受容史 / 書誌学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度はロンゴス『ダフニスとクロエー』の受容研究の成果発表に努めると同時に、資料再確認のため大英図書館で調査研究もおこなった。発表の大きな柱は、これまであまり注目されることのなかった舞台音楽作品の台本と日本における受容である。矢野目源一による最初の邦訳に関する英語論文は、すでにドイツで出版される論文集への掲載が決まっていたものの、その後査読がつき、その意見に基づいた修正を加えて近く刊行予定である。矢野目訳については、さらに自己検閲箇所に関する詳細な分析を日本語論文でも発表した。 また、三島由紀夫『潮騒』への影響研究は、物語内容の比較に関する英語論文が今秋出版される英国留学時代の恩師ジョン・モーガン教授の記念論文集に掲載予定であり、さらに『潮騒』と材源である『ダフニスとクロエー』邦訳の関係について、今秋アメリカ合衆国でおこなわれる国際古代小説学会で発表予定である。現在はジャン・ジャック・ルソーのオペラ音楽『ダフニスとクロエー』のオリヴィエ・ド・コランセによる台本に関する論文も執筆中で、これは前年度に発表したピエール・ロジョンによるオペラ台本の研究の延長線上にある。 なお、これまでおこなってきたテクスト分析やジャック・アミヨ訳をはじめとする西欧での翻訳史研究、美術作品への影響研究の一端は、発表論文の中でも適宜触れられている。また、研究分担者として参加している基盤研究C(研究課題番号:26370361)で扱っているプルータルコスも、ロンゴスと同じローマ帝政下のギリシア語作家で、近代における受容でもアミヨ訳が大きな役割を果たすなど共通点が多いため、研究相互に益するところが多い。 受容研究に関しては当初の計画が全体を見渡す壮大なものだったので、すべてできたとは言いがたいものの、先行研究では知られていなかった多くの発見に加え、新たな知見を提示することができたのではないかと考えている。
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