2012 Fiscal Year Research-status Report
ブータン王国の危機言語マンデビ語の現地調査による記述及び形態統語論的研究
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23720195
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
西田 文信 秋田大学, 国際交流センター, 准教授 (40364905)
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Keywords | 国際情報交換 / ブータン王国 |
Research Abstract |
本年度は、主として前年度に収集したデータの分析及び現地調査を中心に行った。 データの分析に関しては、動詞形態論及び節の構造を中心に行った。現地調査は2013年2月~3月にかけて各ブータン王国トンサ県及びワンディポジャン県においておこなった。主たる研究対象であるマンデビ語ツァンカ方言については、自然発話の音声資料を中心に収集した。このほか、周辺で話される諸言語の言語状況に関する調査も行った。現地調査で得た一次資料をもとに、マンデビ語トンサ方言に関する記述言語学的並びに社会言語学的立場からの研究を進めた。このほか、周辺で話されるブムタン語の諸方言についても語彙調査をおこなった。マンデビ語の形態統語論は他のブータン諸言語とパラレルな現象が見られると言われているが動詞形態論においては非常に面白い現業も見いだされるため、慎重な分析が必要である。談話資料を収集する必要性から、民話の収集も行った。これは、格標識が談話の中で果たす役割や、スイッチリファレンスなどを分析する上で必要な資料であると考えたためである。今後更に多くの資料を収集する必要があるため、次年度も同様の調査を継続する予定である。 成果としては、一般向けの語学書に「ゾンカ語の世界」を執筆した。また「マンデビ語の文の下位分類」、「ブータン諸語の記述・歴史言語学的研究の現状」と題する論文を執筆した。第2回ブータン研究会にて「ブータン諸語の記述・歴史言語学的研究の現状」、日本南アジア学会第25回全国大会にて「ブータン王国のEast Bosidh諸語の系統と分類について」と題してそれぞれ研究発表し、またブータン友好協会主催第1回ブータンシンポジウムにてパネリストをつとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りにデータの取集ができ、それを基に研究成果を発表することができたため。具体的には以下の如くである: 【著書】(共著)『ニューエクスプレススペシャル 日本語の隣人たちII』「ゾンカ語の世界」92~113頁、中川裕監修、白水社 【論文】「マンデビ語の文の下位分類」澤田英夫編『チベット=ビルマ系言語の文法現象 2:文の下位分類』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、「ブータン諸語の記述・歴史言語学的研究の現状」『秋田大学教養基礎教育』第15巻 【その他】・Significance of Language Research Bhutan Observer. 第5面、・Sino-Tibetan languages and gender issues 『秋田英語英文学会ニュースレター』13:4-5、・「世界一幸せな国を目指す国のこどもたち」『教育』(かもがわ出版) 【学会発表】・「ブータン諸語の記述・歴史言語学的研究の現状」第2回ブータン研究会(JICA地球ひろば)2012年5月、・「ブータン王国のEast Bosidh諸語の系統と分類について」日本南アジア学会第25回全国大会(東京外国語大学)2012年10月、・「変わるブータン、変わらぬブータン」ブータン友好協会主催第1回ブータンシンポジウム(JICA研究所)2012年12月
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度として、纏めとしての現地調査を実施する。名詞形態論及び動詞形態論についての再確認及び発展的調査を行う。マンデビ語ツァンカ方言については文例や語彙の補充を行う。周辺の諸方言は2011年度に行った調査の継続として実施し、高級語彙の補充と基礎文例を採集する予定である。今後さらに整理を進め、これらの諸方言がいかなる歴史的発展を遂げてきたのか、またゾンカ語等のチベット系諸語からうけた影響などの分析を進めていく。いずれの言語も消滅に瀕する方言と考えられ、今後の継続調査が急がれる。 研究成果は口頭発表及び論文の形で発表し、国際的な学会・研究会での発表及び国際誌への掲載を目指す。マンデビ語の音韻面における歴史的発展や述語動詞における共時的問題などについて海外の研究者とも研究討議を重ねる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
夏季乃至冬季に実施予定の現地調査及び国際学会での口頭発表のための渡航費が主な使用計画である。また、京都大学及び神戸市外国語大学にて年3回開催されるチベット=ビルマ言語学研究会、及び早稲田大学で開催されるブータン勉強会に参加・発表予定であるため、これらのための旅費に充当する予定である。
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[Book] 日本語の隣人たちII2013
Author(s)
北原次郎太, 永山 ゆかり, バヤリタ, ブリガ, 児倉徳和, 久保智之, 西田文信, 加藤高志, 野島本泰, ダニエルロング
Total Pages
172
Publisher
白水社
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[Book] チベット=ビルマ系言語の文法現象 2述語と発話行為のタイプからみた文の下位分類2013
Author(s)
澤田英夫, 岡野賢二, 加藤昌彦, 本田伊早夫, 鈴木博之, 荒川慎太郎, 大塚行誠, 髙橋慶治, 桐生和幸, 西田文信, 林範彦, 星泉, 池田巧, 白井聡子, 海老原志穂
Total Pages
483
Publisher
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所