2013 Fiscal Year Annual Research Report
文処理における韻律と情報構造のインターフェイスについて
Project/Area Number |
23720196
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小泉 有紀子 山形大学, 人文学部, 准教授 (40551536)
|
Keywords | 心理言語学 / 文処理 / 否定 / 第二言語習得 / 英語 / 日本語 |
Research Abstract |
前年度からの継続・発展として、最終年度となる25年度は主に2つのプロジェクトを遂行した。 1つ目は、日本人英語学習者は否定と作用域の曖昧構造を解釈できるのか、またその解釈傾向は、英語話者への実験と同様に韻律特性の影響を受けるのか、という問いに答えるための黙読実験であった。この実験には英語力の特に高い学習者を対象にしなければならず、データ収集には時間を要したが、科研費を使用して円滑に研究を進めることができた。得られた36人の被験者データを、学会発表並びにProceedings 論文(Koizumi, 2013)で報告した。まず、not-because構文をそのまま提示した場合、副詞節の作用域>否定の作用域という解釈が、英語母語話者と同様に選好されるということが分かった(p's<.01)。この結果は、外国語としての英語学習者であっても、意味的に複雑な作用域の構造を認識し、処理できることを示唆する。しかし、英語母語話者に観察される、文をIf節に埋め込んで提示した場合の中和効果は、日本人学習者には見られなかった (F's <1)。先行研究での結論は、この中和効果は韻律特性の変化によるとしているが、英語を母語としない場合、この手がかりは利用できない可能性がある。報告後もデータ収集を継続し、年度末までに56人のデータを収集し、今後のより詳細な分析につなげることができた。 もう一つは、日本語の形容詞節と否定の作用域に関する構文の研究である。本年度も文献研究や実験構築への努力を重ねたが、日本語の構文は英語より繊細な母語話者の直感が求められ、はっきりと解釈の選好傾向がみられるような刺激文を構築することは予想外の困難であった。海外の研究協力者との打ち合わせ等を通じ、実験構築は慎重ながらも前進しているため、このような構文について初めてとなる文処理実験の成功に向けて、引き続き努力していく。
|