2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720198
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
守田 貴弘 東洋大学, 経済学部, 講師 (00588238)
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Keywords | 空間移動 / 使役自動 / 自律移動 / 類型論 / 分類 |
Research Abstract |
最終年度には,実験ビデオを用いて収集したすべてのデータを整理し,日本語とフランス語の対照研究および自律移動と使役移動という事象の違いに由来する表現類型の研究を行った.主たる成果は次の3点である. まず,事象の違いに関するフランス語の表現パタンの違いに関して,自律移動と使役移動で大きな違いがあることを明らかにした.自律移動では,従来の類型論が予測する通り,経路動詞が主要部で用いられることが多いのに対し,使役移動においては主動詞が使役手段を表し,経路は前置詞句で表すことが圧倒的に多い.ここから,動詞枠付け言語と衛星枠付け言語という類型は固定されたものではなく,ある言語が当該事象に対してどの表現パタンを用いるのかという観点から類型を論じる必要があると考えられる. 2点目として,フランス語の自律移動において見られる表現パタンの揺れに関する条件も明らかにした.動詞枠付け言語に位置づけられているフランス語は,衛星枠付け言語に似た表現パタンをとることが従来から指摘されていたが,これらの表現パタンの選択にかかる条件は明らかではなかった.これに対し,本研究では,経路,様態,および方向を統制した実験ビデオを用いたことにより,視覚的に経路が際立っているとき (水平方向ではなく垂直方向の移動)に経路情報が主動詞で表されて動詞枠付け型となり,水平移動かつ特異な様態(走るやスキップするなど)で移動が行われるときには主動詞で様態が表現され,経路が前置詞句で表されるという衛星枠付け型の表現になりやすいことを明らかにした. 最後に,自律移動では直示情報の頻度の差が日本語とフランス語に大きな相違をもたらしていたが,使役移動では両言語ともほとんど直示情報を表現することができないという共通性があり,自律移動よりも表現パタンが一致することが多いことも明らかとなった.
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