2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720200
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
磯部 美和 東京芸術大学, 言語・音声トレーニングセンター, 助教 (00449018)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 言語獲得 / 言語機能 / かきまぜ / 韻律情報 / 与格主語構文 |
Research Abstract |
本研究は、人間に遺伝的に備わった言語機能が子どもの短期間での母語獲得を可能にしているという立場に基づき、日本語の統語獲得過程を調査し、言語獲得理論と言語機能のモデル構築に貢献することを目的とする。本年度における研究成果は以下の通りである。(1) 言語機能の属性に関する統語研究を検討・整理し、それを基に日本語を獲得中の幼児(日本語児)に実験を行った。本年度は、日本語の興味深い特徴の1つであり、多くの統語研究がなされている与格主語構文に焦点を当てた。人間言語には、この構文を許容する個別言語と許容しない個別言語があり、この言語間変異と言語機能との関わりの解明とともに、その獲得過程の解明が重要な研究課題となっている。また、日本語には与格標識の「に」だけでなく、さまざまな意味を持つ後置詞の「に」もあり、子どもがいつ頃からそれらを区別できるようになるかという興味深い問題もある。そこで、日本語児の与格主語構文の理解を調査する実験を実施した。結果は、被験児が与格標識の「に」と後置詞の「に」を正しく区別し、与格主語構文を大人と同様に理解していることを示すものであった。現在、この実験結果の分析と検討を行っており、学会での発表および論文の執筆を目指している。(2) 日本語児のかきまぜ文理解における韻律情報の利用について、言語獲得に関する国際学会で発表した(GALA2011)。先行研究により、日本語児は、文脈情報が伴った際かきまぜ文を正しく理解できることが明らかにされていた。これに加えて本研究は、対格標識に置かれた韻律情報をもとに、日本語児が正しくかきまぜ文を理解できることを報告した。現在、この成果を論文にまとめる作業を進めている。また、他の構文においても類似の現象が見られるかどうか予備実験を行い、結果の分析と検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 言語理論および個別言語間の普遍性と多様性を扱う文献を調査し、与格主語構文の獲得に関する実験を行った。(2) 子どものかきまぜ文理解における韻律情報の利用について、国際学会において口頭発表した。(3)(2)に関連する予備実験を新たに実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度国際学会にて発表した研究成果を、今後の課題と展望を明らかにしながら論文にまとめる。また、実施した実験の結果を詳細に分析し、それがどのような意義を持つのか、さらに言語獲得理論と言語機能のモデル構築にどのように貢献しうるのかを言語理論研究と照合しながら検討する。その成果を国際学会で発表し、論文を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)本年度の研究成果を論文にまとめるために、言語理論・言語獲得関係の図書・ジャーナルを購入予定である。(2)(1)の作業および実験の実施と結果の分析のために、コンピュータおよび関連製品を購入予定である。(3)今年度の成果を発表するために国際学会に応募中であり、これが採択されれば旅費を必要とする。
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Research Products
(1 results)