2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720200
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
磯部 美和 東京芸術大学, 言語・音声トレーニングセンター, 助教 (00449018)
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Keywords | 言語獲得 / 言語機能 / 与格主語構文 / 直接受身文 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、本研究は、日本語を母語とする幼児(日本語児)の統語獲得過程を調査することで、言語獲得理論と言語機能のモデル構築に貢献することを目的とする。本年度における研究成果は以下の通りである。 (1)前年度より開始した、日本語児における与格主語構文の知識に関する検討を進め、その成果を日本語に関する国際学会で発表し(FAJL 6)、論文にまとめた。前年度に行った実験では、被験児がこの構文を大人と同様に理解していることを示す結果を得た。また、CHILDESデータベースに公開されている日本語児のコーパスを利用して、自然発話場面における、子どもと大人の与格主語構文の発話頻度を調査した。その結果、当該構文がほとんど大人の発話に現れないことが明らかになり、実験で示したこの構文の早期獲得が、大人からの話しかけによるものではなく、言語機能の働きが関与している可能性を高めた。これらの成果を学会にて発表し、多くの有益なコメントを得た。それに基づき、論文を発表した。 (2)日本語児による関係節の理解について実験を行い、学会で発表した(GALANA 5)。先行研究では、日本語児は「ネコを追いかけているサル」のような主語関係節の理解に困難を示すことが報告されていた。本研究では、実験の際に使用するテスト文や絵の提示方法を変えることで、3歳児においても主語関係節を正しく理解できることを示した。 (3)日本語児による直接受身文の理解についての調査を開始した。直接受身文の発話は2歳代で見られるものの、その理解には5-6歳になっても困難を示すことが先行研究により明らかにされてきている。本年度は、直接受身文を発話する際の「話者の事態把握」(川村 2012、等)に着目し、数名の幼児に対して予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)子どもの与格主語構文の獲得に関する実験と自然発話分析を行い、その成果を国際学会において口頭発表した。また、その成果を論文にまとめた。 (2)子どもの関係節の獲得に関する実験を行い、その成果を国際学会において発表した。 (3)日本語の直接受身文に関する予備実験を新たに実施した。本年度成果と次年度実施予定の調査結果を国際学会において発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
受身文の理解に関して、実施した実験の結果を詳細に分析し、追実験を行う。その成果を国際学会で発表し、論文を作成する。また、次年度が本研究課題の最終年度となるため、これまでの研究成果が、言語獲得理論と言語機能のモデル構築にどのように貢献しうるのかを言語理論研究と照合しながら検討する。また、今後の課題と展望を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)平成25年9月にドイツで行われる国際学会(GALA 2013)において、今年度成果および次年度に行う調査内容の発表を予定しており、旅費を必要とする。 (2)本年度の研究成果、および本研究課題全体の成果を論文にまとめるために、言語理論・言語獲得関係の図書・ジャーナルを購入予定である。 (3)(2)の作業および実験の実施と結果の分析のために、コンピュータおよび関連製品を購入予定である。
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Research Products
(3 results)