2013 Fiscal Year Annual Research Report
自然言語におけるスケール性の意味・機能上の役割:形式意味論・語用論的アプローチ
Project/Area Number |
23720204
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
澤田 治 三重大学, 人文学部, 准教授 (40598083)
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Keywords | scalarity / degree / discourse structure / conventional implicature / comparison / modality / intensifier / formal pragmatics |
Research Abstract |
本研究の目的は、自然言語におけるスケール性の意味・機能上の役割について形式意味論・語用論の観点から考察することである。最終年度はこれまでの研究をさらに深めた。具体的な研究内容は以下の通りである。 [1] 程度副詞の意味・使用:これまでに行った程度副詞「少し」・「ちょっと」および比較の副詞「もっと」に関する研究を論文としてまとめ、それぞれ専門誌に投稿した。 [2]「何よりも」の談話的用法:本年度は、談話レベルで使われる「何よりも」の持つ「顕著性・重要性」の意味は、どのような原理によって現れるのかという問題を会話の推意および談話構造の観点から再考した。研究で得られた成果は、国際学会およびワークショップで発表した。 [3] 日本語の指小辞シフト:日本語の指小辞シフトの意味を話し手と聞き手の関係性の観点から考察した。具体的には、[s]から[ch]への音韻シフトの本質は、話し手の成熟度の度合いを慣習的推意のレベルで極端に下げることであり、それにより、聞き手との関係性が再構築され、「甘え」や「連帯感情」といった感情が生み出されるということを明らかにした。研究成果の一部はSinn und Bedeutung 18で発表した。 [4] モーダル指示詞: 引き続き、共同研究者の澤田淳氏と、モーダル指示詞における構造と意味のミスマッチについて考察し、研究内容を、International Congress of Linguisticsおよびワークショップで発表した。 本プロジェクトを通して明らかになったことは、スケール性は、狭義の意味論レベルのみならず、現状に対する話し手の態度、発話モードの変換、発話内的力の調整など、意味伝達レベルにおいても重要な役割を果たしているということである。今後は、コンテクストシフトや動的意味論の知見も取り入れ、談話レベルにおけるスケール性の役割についてさらに考察していきたい。
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