2011 Fiscal Year Research-status Report
動的統語論とタイプ理論的意味論を用いた量化詞の統語的・意味的研究
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23720206
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小林 昌博 鳥取大学, 大学教育支援機構, 准教授 (50361150)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 形式意味論 / タイプ理論的意味論 |
Research Abstract |
23年度は、本研究が対象とする言語現象を説明するための理論的基盤の整理を行った。具体的には、ヒルベルト流の証明理論とゲンツェン流の証明理論の言語理論への展開の可能性を探った。ゲンツェン流の証明理論として言語学に応用されているのは、シークエント計算の体系と自然演繹の体系であるといえる。特に直観主義論理の自然演繹体系の証明は、カーリー・ハワードの同型対応により、型付きラムダ項と関連付けられる。本研究では、文の派生と解析は、証明理論における証明と等価であるという立場から証明理論と言語理論の枠組みの関連について研究をした。また、言語学に関連する枠組みとして、直観主義論理から構造規則を除いた最小論理の枠組みであるランベック計算の枠組みを取り上げた。言語現象を適切に説明するために、基本的なランベック計算の理論体系に対して交換規則と縮約規則、割増規則の付与に関してどのような制限をかければよいかを検討した。 さらに、意味論的モデルとしての命題論理と1階の述語論理の健全性と完全性に関する証明について理解を深めた。直観主義論理の意味論としてクリプキ・フレームにおける意味表示について検討をした。また、言語の意味理論の拡張を目的として、各種の抽象的な代数系に関する知識の獲得に努めた。特に群・環や、圏論といった、ある系の間の関係に関する理論を調べ、各種言語理論への応用など興味深い知見が得られた。言語現象に関しては、量化詞のスコープの問題や省略の問題と証明理論におけるリソースの関係について調べた。これは、直観主義含意論理を使った範疇文法や線形論理などを使った意味理論が有益であるということができ、次年度の研究の展望が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、量化詞のスコープの問題や省略・削除の問題、さらには語順と意味に関する問題を説明するような形式的言語理論の構築になる。初年度は、特にその形式理論を論理学の各種手法を応用した体系から構築するための基礎的な取り組みを行ったといえる。実際の分析や計算機上への実装の研究に移る前に、基礎理論を構築する段階は必要かつ重要であるため、今後への研究へとつながる段階まで進んだと言えると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、初年度の理論的な成果に基づいて当該研究課題で取り上げる言語現象の分析に取り組む予定である。特に語順が緩やかで名詞句の省略が頻繁に行われる日本語がタイプ理論的なアプローチに対して貢献できることは多くあり、できるだけ多くのそれら諸問題を本研究の枠組みに当てはめて分析をしてみる予定である。さらに計算機上でのシミュレーションにつなげていくことも視野に入れている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、いくつかの国際・国内学会に出席を予定しているので、旅費及び宿泊費に研究費を使用予定である。また、論理学及び言語学関連の書籍の購入にも使用予定である。
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