2011 Fiscal Year Research-status Report
パプアニューギニアのマダン州で話される言語における時制と時間表現
Project/Area Number |
23720211
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
野瀬 昌彦 麗澤大学, 外国語学部, 助教 (20508973)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | パプアニューギニア / マダン州 / 時間表現 |
Research Abstract |
今年度はパプアニューギニアの言語の中で,自身の中で一番調査が進んでいるアメレ語(ニューギニア系)とクレオール言語であるトクピシンのデータを中心に,時間表現のデータ収集を実施した.加えて,日本語,ハンガリー語等の他の言語との対照研究を試みた.その結果,パプアニューギニアの現地語の時間表現を文法記述するべき点を整理した.これまでの先行研究やアメレ語の記述文法の調査から,日本語とアメレ語の時制と時間表現を対照した.パプアニューギニアの言語の時間表現は,より複雑でより詳細な記述が必要なことが判明した.さらに対照する言語を増やし,英語,ハンガリー語の時間表現を観察した.同時期に,アマゾンのアモンダワ語には,「週」や「月」などの時間概念が存在しないという研究が出てきた.アメレ語のデータを参照したところ,アメレ語にも伝統的な時間概念と時計ベースの時間概念に差があることが判明した.特に,時計ベースの時間概念は,トクピシン等の接触言語から借用しており,この借用関係をあわせて調査・検討していく必要がある.時間表現の対照研究と並行して,パプアニューギニアのマダン州の言語の社会言語学的状況や記述文法の調査を実施した.最後に,パプアニューギニアの4つの言語を取り上げた時間表現の対照研究を実施し,論文を国際学会にて発表した.取りあげたのはアメレ語(マダン州),ヤベム語(モロベ州),マナンブ語(セピック地方)とトクピシン(パプアニューギニア全域で話されるクレオール)である.4つの言語の時制と時間表現を記述文法ベースで調査し,対照した結果,オーストロネシア言語であるヤベム語やトクピシンが時制の形式が未発達で,時間表現が語彙的に実現される一方,ニューギニア系・パプア系のアメレ語,マナンブ語は時制の形式がより複雑で,時間表現が後置詞や格を伴って実現されるという結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象の言語の記述文法を収集することはできたが,家庭の事情で研究する時間が制限され,予定していたフィールド調査へも行けなかった.そのため,目標となる成果を達成することができなかった.同時に,研究以外のエフォートが多くとらざるをえない状況であった.
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Strategy for Future Research Activity |
何よりもまず,フィールドであるパプアニューギニアへ行き,長期的な現地調査への準備をする.同時に,記述文法では得られない現地語の話者の確保,必要最小限の時制,時間表現のデータを取る予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
得られたデータを総括するためのデータベースの構築を予定している.同時に,対照言語学,言語類型論の観点から,時制や時間表現の特徴をまとめ,どの点でパプアニューギニアの時間表現が特徴的であるのかを論文,国際学会で発表する予定である.
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Research Products
(9 results)