2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720215
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
千葉 謙悟 中央大学, 経済学部, 准教授 (70386564)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 湖北方言 / 欧文資料 / 歴史音韻論 / 官話 |
Research Abstract |
平成23年度は実施計画に記載したとおり英語資料に基づく分析を進めた。 具体的な資料としてはJames Addison Ingle(中国名・殷徳生)の『漢音集字 Hankow Syllabary with references to Giles' Dictionary』(Hankow: N.B.S.S.Mission Press、1899)をとりあげた。この資料は当時の中国の常用字をジャイルズ式のローマ字標音に従い(ジャイルズによる漢字番号も付してある)、当時の湖北方言にあったと思われる5つの声調ごとに配列したものである。 現在のところ資料を整理・電子化した上で音韻体系の分析を進めているところである。その結果19世紀最末期の湖北方言の音韻体系を如実に示すものとして、現代方言とは異なるいくつかの特徴を見いだすことができた。そうした資料分析の成果については研究期間内に公にすることを目標とする。 また19世紀湖北方言に関連する資料として郭連城『西遊筆略』を取り上げその音訳語にみえる基礎方言について初歩的な分析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画ではJames Addison Ingle(中国名・殷徳生)の『漢音集字 Hankow Syllabary with references to Giles' Dictionary』(1899)についての音韻分析を進めることを主眼としており、その分析は順調に進んでいる。その結果を口頭発表および論文にまとめるための準備も進んでおり、【研究実績の概要】に述べたとおり成果の公表は研究期間内に行うことを目指す。 ScarborroughのA Collection of Chinese Proverbs(1875)も分析する計画があったが、計画書にも記載したとおりこれは付随的なものであって、本研究計画の中では主要な目標ではない。 したがって今年度の研究計画と対照した場合、おおむね順調に推移していると判断することができるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初研究実施計画の平成24年度部分に記載したとおり、イタリア資料を用いて湖北方言の音韻を分析したい。Ingleの『漢音集字』が19世紀最末期の湖北方言の音韻の様相を示すものであるとすれば、この期間に取り上げる予定の資料たとえばDe NinoのPiccolo Vocabulario Cinese-Italiano(1925)やLandiのVocabulario Italiano-Cinese(1939)などは20世紀前半の状況を記録したものと考えることができるだろう。 すでに過去の研究において19世紀後期の湖北方言を反映していると考えられるイタリア語資料郭棟臣『三字経』(1869)を分析している。他の時代のイタリア語資料を扱うことで『三字経』研究との通時的な連続性を確保しつつ、同時代性という点で昨年度おこなった英語資料とも関連づけができる。このようにして近代湖北方言音韻史の再構について時間的な幅と分析の精度を向上させることができるであろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施計画書に記載したとおり、ヨーロッパへの旅費を計上した。これはイタリアに所蔵される資料、例えばMagnascoのLingua Cinese Parlata(1905)やSaltoriのGrammatica Cinese(1927-28)の閲覧および当地での研究成果発表のために必要である。状況が許せばIngle『漢音集字』の初版の所蔵調査も行いたい。 上記各種資料の閲覧が成功した場合の複製、および関連資料複製のための費用を「その他」に計上している。 中国語および英語での成果発表のため校閲、翻訳のための謝金を計上した。物品費の多くは研究文献、資料の収集に充てられる。
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Research Products
(3 results)