2012 Fiscal Year Research-status Report
甲骨卜辞から見る中国殷代文化の研究―同文卜辞を中心に―
Project/Area Number |
23720219
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
陳 捷 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (10469182)
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Keywords | 甲骨文字 / 同文卜辞 / 商代文化 |
Research Abstract |
昨年度に続き、本年度はデータベースの構築と同文卜辞の総合的研究Iに取り組んできた。 昨今のインターネット環境の整備充実によって、甲骨文字資料のデータベース化が急速に進展しつつあるが、甲骨拓本と釈文を共に提供するデータベースはまだ非常に少ない。本研究は同文卜辞を調査・整理すると同時に、全ての甲骨拓本の画像を準備し、これらを釈文と共にデータベース化して、更に著録履歴を加え、トータルの情報を提供して、簡単に検索できるデータベースを構築してみた。 そして同文卜辞の総合的研究Iとして、甲骨文字の研究を行った。董作賓の断代基準によれば、卜辞を五つの時期に分けることができるが、近年よく使われているグループ分けの手法を使えば、甲骨文字の筆跡によって卜辞をいくつかのグループに分けることができる。同じ時期または同じグループの卜辞と言っても、必ずしも同年代のものとは限らず、その間に数十年の時間の幅があり得るので、時期区分やグループ分けの理論を用いても、甲骨文字の通時的な変化は検討できるが、細かい年代の特定は非常に困難である。しかし同文卜辞は同時にできたもので、そこに見られる同一文字の異なる書き方は共時的なものである。従って、同文卜辞から甲骨文字の共時性を考察することができ、それによって文字の様相や書写習慣を年代ごとに検討してきた。またこのような比較研究を行い、難解な文字と既知の文字との同一関係を確認して、未解読の文字を慎重に考証してみた。一連の研究成果をまとめ、今秋の学会で発表する予定である。 また、同文卜辞を含めて文書の存在やその形態を示唆する卜辞を取り上げ、新しい視点から商代の文書行政を考察してみた。2012年5月、奈良大学の科学研究費補助金・基盤研究(A)「東アジア木簡学の確立」プロジェクト研究会にて、「甲骨文字と商代の文書行政に關する一考察」と題する発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画のとおり、データベースの構築と同文卜辞の総合的研究Iを中心に順調に研究を進めてきた。研究代表者が鋭意研究に努め、研究環境が更に整備されていることもあって、計画していた研究を実施できたほか、当初計画していなかった商代の文書行政に関するテーマにも取り組み、その成果を研究会で発表できた。 このような努力によって、研究をより円滑に進めることができ、多くの研究成果が期待される。また、比較的早く研究成果を発信することによって、学術交流を深めつつ、研究目的を早期達成できる。これらのことから、本年度は当初の計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き研究計画に沿って着実に研究を進め、研究目的の早期達成を目指して鋭意推進してゆく予定である。より早く多数の研究成果を上げるため、できるだけ多くの資料を精査しつつ、厳密に分析して慎重に考証し、深みのある論文をまとめてゆく。また、学会発表の回数を増やし、国際的な発表の場を活用し、積極的に研究成果を発信してゆきたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は論文作成と成果発表を中心に研究を進めるため、各種の資料集や先行研究の成果を含めて、甲骨学・文字学関係図書が欠かせず、引き続き購入する。また、実地調査、研究発表や学術交流を行うため、その調査費用や国内外旅費などにも充当する予定である。
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Research Products
(1 results)