2013 Fiscal Year Research-status Report
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23720221
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
澤田 淳 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80589804)
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Keywords | 語用論 / 意味論 / 慣習的推意 / ダイクシス / 話者指向性 / 対照研究 / 歴史研究 / 文法 |
Research Abstract |
本研究は、話者指向性を反映する言語現象(ダイクシスと慣習的推意)について考察することを目的としている。本年度は、視点と文法の関係性、日本語ダイクシスの歴史に関する研究成果を公表した。 視点と文法の関係性については、話し手の近くにある対象(場所)が聞き手への視点移動(指標詞シフト)によって、遠称指示詞that(there)で指示される現象について考察した。このような予想外の運用をなすthatは、命令、依頼、確認といった「聞き手との相互行為」を前提とする聞き手指向的な発話の中で現れる傾向にある点を、映画、漫画、小説からの具体的なデータによって明らかにした。この成果の一端は、「視点、文脈と指標性―英語指示詞における聞き手への視移動の現象を中心に―」『日本語用論学会第15回大会発表論文集』において発表した。 日本語ダイクシスの歴史については、「見知らぬ人が話しかけてきた」や「ヤクザが僕を脅してきた」のような話者への(心理的な)行為の仕向け・仕掛けを表す「てくる」(「行為の方向づけ」の「てくる」)についての歴史的研究をおこなった。この成果の一端は、「ダイクシスの観点からみた日本語の複合動詞の歴史」というタイトルで、「国際シンポジウム 日本語およびアジア諸言語における複合動詞・複雑動詞の謎」(国立国語研究所)において発表した。また、合わせて、「行為の方向づけ」の「てくる」を含む幾つかのダイクシス現象(敬語、授与動詞「くれる/やる」、「よこす/やる」、「行く/来る」、指示詞コ/ソ/ア、等)の歴史的研究をおこない、現代共通日本語におけるダイクシス表現の持つ視点制約・人称的性質が、日本語の歴史的変遷の中で発生・確立していくメカニズムについて考察をおこなった。この成果の一端は、「日本語のダイクシス表現と視点、主観性」というタイトルで、「多言語記述のための主観性シンポジウム」(招待講演)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、特にダイクシスに関わる現象の考察に研究の比重が置かれた点で、慣習的推意に研究の比重を置く当初の予定とは若干異なるものとなったが、話者指向性を反映する言語現象についての総合的な研究をおこなうことができており、順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度では、本年度までの研究内容を敷衍しつつ、考察を深めていきたい。国内外の学会やワークショップに参加し、新しい成果を積極的に公表するのと同時に、研究の総まとめとして、これまでおこなってきた研究内容を学会誌・紀要、および、書籍の形として公開できればと考えている。
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