2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720226
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
田和 真紀子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (30431696)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 評価的な程度副詞 / 程度副詞体系 / 中世後期 / 史的変遷 |
Research Abstract |
本研究は、程度副詞の体系を明らかにする研究の一環として、「評価的な程度副詞」の特徴を、評価性と程度性の意味・機能が成立する過程から明らかにすることを目的とし、研究年度最初となる平成23年度は、本研究の研究方針を示す論文2本を執筆することができた。 一つ目は「評価的な程度副詞の成立と展開」(『近代語研究』第16集、2012.3発行)である。この論文では、中古から近世初頭の高程度を表す程度副詞を、「いと・きはめて」といった「極度を表す程度副詞」と、「あまり(に)・一段(と)」といった「評価的な程度副詞」の二つに分けることによって、(1)特徴的な「評価的な程度副詞」が中世以降に成立・展開したこと、(2)中古で一般的だった「極度を表す程度副詞」が、中世後期~近世初頭の口語的な資料においてほとんど見られなくなり、高程度を表す副詞が「評価的な程度副詞」と交替したことを明らかにした。本論文によって、研究開始前は予測レベルであった評価的な程度副詞の成立時期の特定と、これまで知られていなかった日本語程度副詞体系が中世後期に変化したことを明らかにすることができた点に、日本語副詞研究上の大きな意義があった。 二つ目は、「副詞は「品詞のゴミタメ」か―副詞の異名の名付けと品詞分類の問題― 」(『国語語彙史の研究』第31集、2012.4発行)である。この論文では、現代日本語副詞の理論的研究における「副詞の異名」の名づけを手掛かりに、これまでの品詞分類における副詞の分類の問題について整理し、副詞の体系を解明するためには通時的な系譜(副詞の意味・機能の史的変遷)を系統的に明らかにする必要があることを説いた。 以上、二つの論文によって、程度副詞の体系化における「評価的な程度副詞」の認定の重要性と古代語から近代語への体系変化の実証的研究の必要性、また副詞の史的変遷の記述的研究の意義を述べることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、勤務・在住している栃木県内にはない資料も、科研費を活用することによって、多数の資料を取り揃えている国文学研究資料館や国立国語研究所等に直接行くことができ、横断的な資料調査を十分に行うことができたため。科研費をいただく前から積み重ねていた研究をもとに、調査前からかなりの確度で研究結果予測を立てられたため、順調に研究を進展させることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、「評価的な程度副詞」の成立に焦点を当てた研究を行ったため、調査対象は中古から中世後期(一部近世初頭含む)の文献および用例であった。本年度の研究によって、中古から中世後期という古代語から近代語への過渡期において「評価的な程度副詞」が成立することによる高程度を表す程度副詞の体系変化があったことを明らかにすることができた。一方で、中世後期の「評価的な程度副詞」中心の高程度を表す程度副詞体系と、現代語の「極度を表す程度副詞」と「評価的な程度副詞」の両方が存在する高程度を表す程度副詞体系との違いも明らかになった。そこで次年度は、近世から現代に至るまでに高程度を表す程度副詞の体系がどのように変化したかについて、特に現代語の「極度を表す程度副詞」(とても・ひどく・すごく・大変等)の成立に注目しながら、調査・研究を行ないたい。具体的には、近世初頭から幕末にかけての上方語の資料と江戸語資料、明治から昭和(戦前)の資料を調査対象とし、高程度を表す程度副詞の用例を収集する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度が本研究の最終年度となるため、研究成果を発表するための経費が研究費の主な使用目的となる。資料収集と研究打ち合わせ(学会・研究会発行の研究書への掲載打ち合わせ)で、日本語学会春季大会(2012.5@千葉大学)、近代語学会(2012.6or7@白百合女子大学)に出張予定である。研究発表と研究打ち合わせで、国語語彙史研究会(2012.9場所未定、関西地区)に出張予定である。資料収集・用例確認のために、国立歴史民俗博物館・国文学研究資料館・国立国語研究所に出張予定である。また、資料整理のための文房具購入と本年度購入しなかったスキャナを購入する予定である。
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Research Products
(2 results)