2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720226
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
田和 真紀子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (30431696)
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Keywords | 評価的な程度副詞 / 成立 / 史的変遷 / 高程度を表す副詞 / 程度性 / 評価性 / 程度副詞体系 |
Research Abstract |
本研究では、程度副詞の体系を明らかにする研究の一環として、「評価的な程度副詞」の特徴を評価性と程度性の意味・機能が成立する過程から明らかにすることを目的とし、その基礎的な調査・研究を行った。 最終年度の平成24年度は、本研究まとめの年として、研究会における口頭発表を1回行い、成果報告として論文1本を執筆することができた。 口頭発表は、第101回国語語彙史研究会(平成24年9月29日・神戸市外国語大学)において「中世後期における高程度を表す副詞の体系」というタイトルで行った。この発表では、平成23年度の研究で得られた結果(評価的な程度副詞が中世後期に成立し、日本語程度副詞体系がこの時期に変化したこと)を元に、もっとも変化の著しかったと考えられる中世後期の高程度を表す程度副詞の様相を調査し、報告を行った。その結果、中世後期には、古代語の流れを受けた擬古文・漢文訓読文の文脈以外では極度を表す程度副詞が用いられず、話しことば的な表現では、高程度表現のほとんどを評価的な程度副詞が担っていたことが明らかになった。 研究論文は、「成立過程から見た高程度を表す評価的な程度副詞の特徴―「チカゴロ」を一例として―」というタイトルで『都大論究』50号(平成25年6月発行予定)に掲載が決定している。 この論文では、高程度を表す評価的な程度副詞が、どのような過程を経て成立するのかを、中世後期に頻繁に用いられた「チカゴロ」という語をモデルに調査・研究を行った。モデルの一つではあるが、この「チカゴロ」の史的変遷の例から、話し手による主観的な範囲限定のもとに〈評価〉の意味が生じることがわかった。 研究期間全体を通じて、本研究では、現代日本語の共時的な研究だけではわからなかった、中世後期に高程度を表す評価的な程度副詞の発生によって高程度を表す副詞の体系の原型が形作られたことを明らかにすることができた。
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