2012 Fiscal Year Research-status Report
サハリンで形成された日本語樺太方言の多様性に関する社会言語学的研究
Project/Area Number |
23720237
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
朝日 祥之 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 時空間変異研究系, 准教授 (50392543)
|
Keywords | 日本語学 / 方言学 / サハリン / 接触方言 |
Research Abstract |
当該年度は,昨年度に引き続き,日本語樺太方言の音声資料の継続的な収集を行った。2012年4月に北海道網走市にある北海道立北方民族博物館で,現地所蔵の日本語音声資料の収集ならびに,関連する日本語資料の収集を行った。この他には,2013年3月に北海道札幌市,2012年6月に稚内市で樺太からの永住帰国者に対する面接調査を実施し,また,2013年3月に韓国とサハリンでの日本語樺太方言に関する情報収集を実施した。この他にも当該研究課題に関連する研究成果について,Japan Anthropology Workshop 2013をはじめとする関連学会での口頭発表をを行った。 収集された音声資料に関しては,基本的には書き起しを実施した。サハリン研究者の一人であるロバートアウステルリッツ氏がニヴフ人に対して昭和30年代に収集した日本語音声資料に関しては,すでに活字にされた書籍が刊行されている。この書籍の情報を手がかりとし,音声資料を聞きながら,書き起し資料の精度を高めた。この作業には,この調査に参加した話者(北海道網走市居住)と同じ地域の出身者に判定を依頼して,作業を進めている。 なお,NPO日本サハリン同胞交流協会が収集してきた,現地日本人の日本語音声,録画資料に関して,目録の作成と,デジタル化された音声のカタログの作成,ならびに,音声資料の書き起しに着手した。 この他には,これまでの研究成果をまとめた「サハリンに残された日本語樺太方言」(明治書院)を刊行した。同書は読売新聞,「本の雑誌」,北海道新聞等で書評,または紹介記事として取り上げられ,国立国語研究所所長賞を受賞している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的に本調査の目的は,日本語樺太方言に関する情報の収集と現地調査による音声資料の収集である。この点については,いずれも順調に情報が収集されていると言える。収集された資料の整備,書き起し作業も進めており,おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで収集した資料の継続的な整備と分析に着手することがまず方針として挙げられる。ニヴフ人調査に関しては年度中に研究会での口頭発表を実施する予定である。 また,韓国安山市をはじめとして,韓国に樺太から永住帰国をした朝鮮人に対する調査を実施し,彼らの音声資料の整備を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究事業を進めていく上で,平成25年度に実施が予定されている調査,書き起し資料の整備の強化を行う上で,平成24年度に交付された研究費の一部を次年度に使用すると判断した。この経費を含め,平成25年度交付予定の研究費を計画的に執行していく。
|