2012 Fiscal Year Research-status Report
形式と意味のインターフェース研究―日英語の比較構文に焦点をあてて
Project/Area Number |
23720249
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉本 真由美 大阪大学, 文学研究科, 助教 (60580660)
|
Keywords | 比較構文 / 段階形容詞 / イベント構造 / 統語論 / 意味論 |
Research Abstract |
本研究では、日英語の比較構文の生成過程、解釈プロセスを明らかにすることに主眼を置いている。平成24年度は、23年度に引き続き、'than' の後ろに節をとるタイプの英語の比較構文を取り上げた。特に、比較構文に現れる形容詞などの段階性を示す句に注目し、これら(Degree Phrase; DegPとする)が統語的にどのような位置に生成されるかという点と、これらが比較文の意味解釈にどのように寄与するかを考察した。 'than'に後続して節を取るタイプの比較構文には、2種類あると言われている(例えばJohn invited more men than Bill invited.のように'than'以下に削除部分が見られるものと、 John invited more men than Bill invited women.のように'than'以下に完全文が現れるものが挙げられる)。それぞれのthan節における統語的特徴が異なることから、本研究では、前者のタイプでは、DegPがthan節内の項位置に、後者ではthan節内の動詞句付加位置に、それぞれ非顕在的に存在することを提案し、この統語上の位置の違いが、意味的制約の違いを反映していることを実証した。 本年度はまた、英語の比較構文に加え、日本語の比較構文についても検討した。日本語でも英語と同様に上記の2種類の構文が見られること、また、先行研究の主張に反して、「より」の後ろに節が続く比較構文が存在し、統語上でも節構造を成すことを提案した。このように提案することで、節の中に(英語と同様に日本語の比較構文でも)段階性の程度を示すDegPが非顕在的に存在すると仮定される。これによって統語的特徴や意味的容認性を捉えられると考え、この仮定の妥当性を検討すべくデータ収集と分析を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、英語と日本語の比較検討をすることで、節比較構文の容認性条件を意味論的観点から調査し、比較構文に含まれる形容詞のスケール構造と比較節の示すベントとの関わりが容認性に影響していることを見出した。そこで立てた仮説と、それを実証した結果を国際学会で発表する予定であったが、比較構文の言語データ収集をさらに進めることで、仮説を一部修正する必要が出てきた。このため、研究成果の発表を一部を見送ることとし、応募当初の補助事業期間を1年延長して、研究を次年度に持ち越した。他は概ね、申請時の計画に沿って研究を進めることができたが、上記の点において、計画を変更して研究を継続している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度から引き続き、日英語の比較構文について言語資料を収集し、データベースの補完を行うとともに、これまでに提案した仮説の妥当性を検討する。また、'than'や「より」に節が後続するタイプの比較構文に加え、句が後続するタイプの比較構文については、現在のところデータ収集にとどまっているので、それらのデータを分析し、節をとるタイプの比較構文との比較検討を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に研究を進める中で、構築していた仮説を一部見直す必要が出たため、国際学会での発表を見送った。次年度は本研究費をその旅費に使用するとともに、考察を進めるうえで必要となる書籍等の購入に宛てる予定である。
|
Research Products
(1 results)