2013 Fiscal Year Annual Research Report
英語の史的統語変化に関する生成理論的研究:パラメターモデルの精緻化を目指して
Project/Area Number |
23720251
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄田 裕幸 島根大学, 教育学部, 准教授 (00325036)
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Keywords | 英語学 / 史的統語論 |
Research Abstract |
研究最終年となる本年度は,中英語 (ME) において動詞屈折接辞の衰退が空主語の消失に与えた影響と,それに伴う主語位置の変化について調査および考察を行った。 まず,空主語の消失に関してコーパスを用いた実証的調査を行い,初期中英語 (EME) では空主語が生産的であったのに対して後期中英語 (LME) ではほぼ消失していたことを明らかにした。同じ時期に英語の形態的変化として動詞の複数形一致接辞が消失したことに着目し,形態論と統語論のインターフェイスの観点から一連の変化を以下のように説明した。すなわち,英語の基本句構造としてRizzi (1997) 流の細分化されたCP構造を仮定した上で,(i) 古英語からEMEにかけては数の一致素性がTop主要部に,人称の一致素性がFin主要部に,それぞれ担われていたが,複数形一致接辞の形態的衰退とともにこれらの一致素性がFinに一括して現れるようになり,(ii) この一致素性の推移の結果,英語における空主語の消失が生じた,と主張した。 また,MEにおける時の副詞と主語の位置関係についてもコーパス調査を行い,EMEでは「代名詞主語―副詞」語順が圧倒的に優勢であるのに対し,LMEでは逆に「副詞―代名詞主語」語順が優勢となっていることを明らかにした。また,LMEでは主語が名詞句か代名詞かにかかわらず,「主語―副詞―定形動詞」と「副詞―主語―定形動詞」の語順がおよそ3対7の割合で生じていることが分かった。これらの観察に基づき,以下の3点を主張した。(iii) MEを通して2つの主語位置が利用可能であった。(iv) EMEではこれらの主語位置は情報構造に基づいて使い分けられていたが,LMEではそのような使い分けはなかった。(v) EMEからLMEにかけて,英語の主語位置は全体的に下方に推移した。とりわけ (v) は,英語の主語位置が通時的に上方に推移したとする先行研究に対する反証となっている。
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Research Products
(6 results)