2013 Fiscal Year Research-status Report
形状表現に注目した対比における意味変化のメカニズム
Project/Area Number |
23720253
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
有光 奈美 東洋大学, 経営学部, 准教授 (00408957)
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Keywords | 対比 / 形状 / 意味変化 / イェスペルセンの否定のサイクル / 反転 / 空間認知 / 強意語 / 価値的評価 |
Research Abstract |
本研究の目的は、英語と日本語の対比表現でも特に「形状」に着目し、意味変化のメカニズムを解明することである。形状に関する言語表現が、日・英語で形状を示すだけでなく、完全性や程度の甚だしさを表す強意語となることがあり、その背景に存在する意味変化のメカニズムを解明している。25年度は日本認知言語学会で「見込みの有無に関する表現の意味理解とその動機づけ―英語における“a slim chance” と “a fat chance”―」の研究発表を行った。単に形状の大小だけが量を決めるのではなく、否定的価値が存在すると意味が反転する場合を指摘した。また、日本語用論学会大会発表論文集に論文「英語広告表現におけるメタ言語否定・意味反転・共有知識からの逸脱に関するズレの階層性―言語表現と非言語表現の接点を含めた意味伝達―」を発表した。海外ではジュネーブ大学で行われた19th International Congress of Linguistsで「Irreality, negative meanings and intensifiers」を発表した。形状表現の多義性、意味変化、意味反転の一部には、対比・段階性・完全性等の要素が基盤であることを日英語の事例収集とその分析から裏付けている。形状表現は非言語認知を含みつつ、意味理解において多義性(単なる物理的描写ではない価値的評価)を持つことを明らかにしてきている。引き続き視覚情報が図形の対比における言語表現の意味変化の認知基盤であることを解明するため、記述的な言語分析によるアプローチに加え、今後形状表現の対比における意味変化のメカニズムの認知基盤をできるだけ生理的基盤からも解明することを目指す。視覚的刺激(形状・図形)を素材としたタスクを作成し、言語表現の意味変化との合致や相違を確認し、国内外で発表を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在も引き続き教育に費やす時間が非常に大きな割合を占めており、まとまった研究時間を取れるのが長期休暇が中心となってしまう状況にある。今年度が最終年度であることから、授業実施期間も含めて継続的な研究が遂行できるよう時間配分を工夫していく。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き今年度も既に国内外の学会での研究発表を行うことが決まっている。今後、そうした発表準備を進めつつ、その後は論文の形にまとめていく予定である。また、事例収集はできてきたので、実験にシフトし、その結果や分析内容を研究発表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
授業実施期間中には静かに物事を考えられるようなまとまった研究時間を取ることが難しい場合があり、その結果、まとまった作業をする時間が長期休暇中心となっている。また、言語事例を収集するのは日頃からこまめに蓄えていくことに慣れており、進捗させることができているが、一方で、視覚的刺激・図形タスク作成について思うように進められていない部分が残っている。 最終年度ということを念頭に、まとまった結果を示すことができるよう、授業実施期間も含めて継続的な研究を進めていく。教育の現場からヒントを得ることも多いが、研究には研究だけに集中できる一定の落ち着いた時間が必須であると感じており、手を動かす時間を確保できるよう工夫していく。繰り越し金額については言語刺激ではなく、より視覚刺激としてのデータを収集するのに使用する予定である。また、それをタスク化するためにも使用していく。具体的には、視覚的刺激・図形タスク作成を仕上げて、それを用いて調査実験を行うことを計画している。2014年度はこれまでの成果の一部を公表していく一環として海外学会口頭発表も予定している。
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