2011 Fiscal Year Research-status Report
言語少数派の子どもをめぐる、地域と学校の連携モデルの構築
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23720262
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
佐藤 真紀 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 非常勤講師 (60589711)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 年少者日本語教育 / バイリンガル教育 / 言語少数派の子ども / 学習支援 / 母語 / 教科学習 / 二言語併用 |
Research Abstract |
本研究は、年少者日本語教育において、言語少数派の子どもの言語生態保全を目指し、実践の手立てとなる「地域」と「学校」の連携モデルの構築を目的とする。具体的には、地域ボランティアと学校教員が協働して言語少数派の子どもの学習支援プロジェクトを行う。そして、プロジェクトを通して、支援の計画や見直し、実施、評価という過程を共有していくことの有効性を検証し、具体的なその実践の手立てとなる、汎用性や発展性のある連携モデルを目指す。 具体的な実施計画としては、実践そのものの枠組みを修正しながら、次の3つの段階に沿って進めていく。【第1段階:プロジェクト発足、連携の実態調査による現状と課題の整理(初年度)】→【第2段階:プロジェクト修正、課題解決に向けた取り組み(2年目)】→【第3段階:プロジェクト修正、「地域・学校連携モデル」の構築(3年目)】 初年度(H23年度)は、第1段階のプロジェクトを発足させ、現状と課題の整理を行うことを目指した。まず本研究のプロジェクトに参加してくれる協力者を募り(12名)、学習支援のためのプロジェクトチームを発足させた。次にフィールドとなる公立中学校の選定を行い、研究許可を得てフィールドエントリーを行った。そして、中学1年~中学3年にあたる言語少数派の子ども達に対し、「教科・母語・日本語相互育成学習モデル」に基づく学習支援を開始した。学習支援を受ける言語少数派の子ども達は、初年度は中3が2名、中2が2名、中1が3名の計7名である。学校内で継続的にこのような形の支援をプロジェクトとして行うこと自体、理解を得ることが難しい中、初年度は連携モデル模索に向け、いいスタートが切れたと評価できる。 現在は、週1回90分程度の学習支援を継続中であり、学習支援場面、ミーティング場面等の音声データの収集を行いながら、学校で同様の支援を行う際の課題を整理している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、当初2011年度4月から行う予定であったが、3月11日の東日本大震災の影響を受け、言語少数派の子ども達の多くが帰国したことを受け、前期の間は本格的な学習支援を開始することが難しかった。また、当該プロジェクトは、学習支援の性質上、継続的に学習に参加してくれる中国語母語話者支援者、韓国語母語話者支援者、英語母語話者支援者の存在が欠かせず、そのメンバーを集めてチームを編成することや、学校側に許可を得ることなどにも時間を要した。 地震の影響が一旦落ち着くと、戻ってくる子ども達や新たに来日する子ども達も増え、プロジェクト協力者も得られたため、中学校で2学期にあたる9月から、本格的にプロジェクトとしての学習支援を開始した。そのため、当初の予定よりはやや遅れているが、2011年9月以降のデータ収集は順調であり、これから、学習支援の実践とデータ収集を継続して行いながら、並行して初年度に収集したデータの文字起こしや翻訳等の作業にすぐに取りかかることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、初年度からの続きである、【第1段階:連携の実態調査による現状と課題の整理】を継続して行い、そこから見えてきたことを踏まえ、プロジェクトを修正し、【第2段階:課題解決に向けた取り組み(2年目)】に移っていく。 実践面では、初年度に引き続き、研究協力校である中学校での学習支援を行い、データを収集する。また、研究においては、7月の日本言語文化学研究会と、8月の世界日本語教育大会にポスター発表のエントリーをしており、また、10月に行われる秋季日本語教育学会にも発表エントリーをする予定である。そこでは途中経過を報告し、フィードバックを受けつつ、研究を推進していく予定である。そして、これらの実践や研究を踏まえて連携のあり方を見直し、第2段階の【課題解決に向けた取り組み】を展開していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は当該研究費使用の最終年度であることから、プロジェクトの修正と精緻化を進め、【第3段階:「地域・学校連携モデル」の構築(3年目)】を目指す。2年目に得たデータの文字起こしや翻訳作業を短期間に行うため、研究協力者を多く集める。そのため、謝金としての使用が多くなることが予測される。また、3ヵ年分の実践と研究を掲載した報告書を作成し、関係各所に配布する予定である。
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Research Products
(4 results)