2013 Fiscal Year Research-status Report
ライフステージに伴う外国人妻のアイデンティティの変遷
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23720263
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
伊藤 孝恵 山梨大学, 留学生センター, 講師 (10348104)
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Keywords | 国際結婚 / アイデンティティ |
Research Abstract |
当年度は、調査対象である、日本人と国際結婚した中国人女性に対し、引き続きアイデンティティに関する調査を実施し、データの蓄積を行った。調査に際しては半構造的インタビュー、及びPAC分析を行い、インタビュー内容は全て文字化した。 本研究は、ライフイベントなどの生活環境に応じた、2名の対象者のアイデンティティの変化を追跡する目的で行っている。調査対象者は2名とも子どもをもつ母親であり、子どもの成長や状態に応じて、意識化されるアイデンティティの表出に変化が見られた。つまり、子どもへの関わりがより深まったり、育児や教育について不安や心配が多かったりする状況下においては、「中国人である自分」より「母親としての自分」が優先的に意識化されている傾向が見受けられた。また、二国間関係や日本の経済状態といった子どもの現実と将来を取り巻く環境も、母親としての意識を促す要因となっていた。 特に、学齢期の子どもをもつ女性においては、子どもの成績が最も大きな心配事であり、子どもの学校への適応や将来の行く末を案じる母親としての意識が強く表れていた。それは、子どもに対する心配が比較的少なかった時と比較すると、自分の生活に対する関心や中国人としての意識より、優先されるものであった。悪化している母国と日本との外交関係は、中国人としてのアイデンティティを顕在化させる要因とはならず、二国間にまたがるルーツをもつ子どもの行く末を案じる母親としての意識につながっていたのは、興味深い結果であった。 当年度の調査においては期待していた結果が得られ、今後子どもの進級・進学といったライフステージを迎える彼女たちのアイデンティティをさらに追跡することにより、示唆に富んだ縦断研究となることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度計画していた調査をほぼ予定通り実施し、期待していた結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も、引き続き調査対象者に対する調査を実施し、データの蓄積を行う予定である。それとともに、既に収集したデータを整理し、研究成果として得られた知見をまとめていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査対象者の家庭の事情や一時帰国などにより、調査の一部が実施できなかったことと、それに伴う物品の購入を行わなかったため。 計画した調査を実施し、必要な物品を購入するとともに、学会に出席し研究に必要な情報を収集する予定である。
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