2012 Fiscal Year Research-status Report
日本語を使う私の学び―私費留学生から永住者になった中国人女性のライフストーリー
Project/Area Number |
23720264
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
範 玉梅 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (80551952)
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Keywords | 国際情報交換 中国 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究は、日本における私費留学生から永住者になった8人の中国人女性を研究対象にし、日本語を使う彼女らの学びに焦点におき、第二言語で生きる彼女らの経験及びアイディンティティの変容をライフストーリーで捉えようとするものである。 平成23年度は、研究対象である中国人女性たちが生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境、日本にいる彼女らの経験を把握するための文献調査及びインタビュー調査を行った。当該年度の平成24年度は、追加インタビューを行いながら、彼女たちの生きる姿をライフストーリーでまとめてみた。本年度では、データ収集終了及びライフストーリー作成以外に、『新世代中国人の日本留学』の著書を出版し、国際学会発表を二回行った。 『新世代中国人の日本留学』(筆者,2012)の出版をきっかけに、日本にいる中国人学習者に関わる諸問題だけではなく、彼らが生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境をより把握できるようになり、本研究の協力者である中国人女性の経験への理解も深まる一方である。また、日本語学習者である中国人女性の視点から、一人の協力者のライフストーリを取り上げ、国際学会(5th Independent Learning Association Conference 2012)で発表を行った。この学会参加及び発表より、女性学習者を取り巻く環境をより広い視野での認識ができるようになり、ライフストーリーの書き方に関してもいつくかのアドバイスをいただいた。さらに、第九回国際日本語教育・日本研究シンポジウムでは、多文化共生における外国人女性のあり方に関する議論からも、如何にジェンダーなどのような視点を取り入れ、より総合的に本研究考察を行えばいいのかということにヒットを得たと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績でも述べたように、本研究は、日本における私費留学生から永住者になった8人の中国人女性に協力いただき、日本語を使う彼女らの学びに焦点におき、第二言語で生きる彼女らの経験及びアイディンティティの変容をライフストーリーで捉えようとするものである。そのための具体的な計画として、彼女らの生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境、日本にいる彼女らの経験を把握した上で、彼女たちはどのように異文化を対峙する中で、何を学び、どのように成長してきたのかを分析し、その結果をストーリーにまとめる。考察では、日本という新しい実践共同体の中で第二言語による新たな自己の獲得とは、彼女らにとってはどのような意味を持つのか、彼女らのアイディンティティの変容との相互関係を包括的に捉える。 以上の研究目的を達成するために、平成23年度は、研究対象である中国人女性たちが生きてきた母国中国及び日本の社会文化環境、日本にいる彼女らの経験を把握するための文献調査及びインタビュー調査を行い、当該年度の平成24年度は、追加インタビューを行いながら、彼女たちの生きる姿をライフストーリーでまとめてみた。本年度までに実施した研究の進展状況から見れば、データ収集から個人ストーリー作成までは、当初の計画通りに進展してきたと言える。しかし、総合考察においては、最後に、ジェンダーの視点から、協力者の女性たちのことも含めて日本社会にいる女性の問題などを十分に検討できず、より意義のある報告書を提出するのに後一歩の努力が必要があると思う。ようするに、本研究においては、本年度までの達成度はおおむね順調に進展していると思えるが、最後の総合考察では、より多様な関連領域の研究成果を取り入れて比較検討を行う必要があると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は第二言語で生きるという体験を彼女ら(本研究協力者である中国人女性)の視線から明らかにしようとするものである。より豊かな研究結果を出すには、今後、学会発表や投稿論文の執筆などの機会を通して、より多方面の研究資料を収集し、総合考察では、ジェンダーの視点を取り入れ、より多様な関連領域の研究成果を考察に取り入れて比較検討を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額:150,146 使用計画: ①昨年発表できなかった一人の女性のストーリーをまとめ、学会発表及び資料収集を行う予定。 ②本研究におけるストーリーの総合考察を取り上げ、シンポジウムで発表を行う予定。
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Research Products
(3 results)