2012 Fiscal Year Annual Research Report
地域日本語教室における「対話中心の活動」の意義と効果に関する研究
Project/Area Number |
23720266
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
御舘 久里恵 鳥取大学, 国際交流センター, 講師 (60362901)
|
Keywords | 地域日本語教育 / 生活者としての外国人 / 対話中心の活動 / コーディネーター / 地域日本語教育専門家 |
Research Abstract |
本研究では,「対話中心の活動」を実践している地域日本語教室でインタビューと活動の記録を行い,活動のバリエーション及び学びの実態と,それが対話活動に至る背景や教室理念とどのように関わっているのか,また対話活動の実践にどのような効果あるいは課題があるのかを明らかにした。 インタビューの分析から,対話活動を実施することによって外国人参加者にコミュニケーション能力が身につき,地域社会における人間関係ができること,日本人参加者の間口が広がり,地域に展開しやすいといった意義が見出された。一方で,従来の「言語学習観」をシフトさせ,活動に対する共通の理念を持ち,その上でボランティアが「対話力」を身につけていくこと,また日本語が初歩段階の外国人参加者の学習機会を保障したり,学びがおこるように対話活動をデザインしたりすることなど,多くの課題があることがわかった。 活動の分析から,文型積み上げ型の活動と併用している教室では,対話活動においてもボランティアが「教える側」,外国人参加者が「学ぶ側」といった役割の固定化が見られ,言語形式により注意が向く傾向も見られた。一方教室設立当初より対話活動だけを行っている教室では,外国人参加者とボランティアがテーマについて共に意見を出し合っており,「意味の交渉」を通して相互理解をはかることに重点が置かれていた。 以上のことから,対話中心の活動を充実させるためには,教室の理念を明確にして参加者と共有をはかり,それを体現できる場をデザインし,さらにそこから地域へとつないでいく「コーディネーター」と,地域社会とそこに暮らす外国人の状況に応じて,日本語が初歩段階の外国人の学習を保障し,対話活動を学びがおこるようにデザインできる「地域日本語教育専門家」が必要であり,そういった専門性を持った人材を配置する等の,行政による制度整備が必要であることを主張した。
|