2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720267
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
永井 涼子 山口大学, 大学教育機構, 講師 (10598759)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医療談話 / 介護談話 / 談話分析 / 外国人看護師・介護福祉士 |
Research Abstract |
本研究は談話を録音して文字起こしし、それをもとに分析および考察を行う。平成23年度は、研究対象となる談話の録音調査および文字化作業を行い、次年度からの研究発表および論文執筆の基礎となる研究データの作成を行った。4~6月: 社会福祉法人恩賜財団済生会山口県済生会山口総合病院にて、録音調査を依頼、承諾を得た後に看護師の引継ぎ談話(全科朝夕2日分)の録音(約10時間分)を実施した。7~10月: 上記の録音データの書き起こし作業を行った。11~12月: 西日本の総合病院および介護施設に調査依頼状を送付した。医療コミュニケーション教育研究セミナー(第6回)に出席し、医師や看護師らによる医療コミュニケーション研究についての情報収集および、本研究の医学界への意義についての意見交換を行った。1月: 水島中央病院(岡山県)に調査を依頼、承諾を得てナースステーションにおける看護師談話(約4時間分)の録音実施。2月: 独立行政法人国立病院機構呉医療センター(広島県)に調査依頼、承諾を得て調査開始(現在調査中)。社会福祉法人今山会特別養護老人ホーム寿生苑(福岡県)に調査依頼、承諾を得て調査開始(現在調査中)。医療法人社団旭診療所介護老人保健施設あすなろ旭に調査依頼、承諾を得て介護スタッフらの談話(約2時間分)を録音。日本語教育国際研究大会への発表申込み(査読の結果、採用決定)。3月: 水島中央病院の録音データの書き起こし作業実施。専門日本語教育ワークショップ-しごとの日本語-介護日本語に出席し、介護現場の日本語教育の現状、ニーズの情報収集を行った。 本年度は病院および施設の調査件数は少ないものの、2~10時間におよぶ長時間の調査を実施することができた。また、看護師の引継ぎ、相談、医師とのやりとりなど、様々な場面の談話を録音することができ、次年度の分析および考察の可能性を広げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究発表および論文執筆は行っていないが、当初計画より、本年度は研究データ蓄積に充てる期間であったため、予定通りである。当初計画では、短い談話データ(1時間弱程度)を多くの病院および介護施設より得る予定であったが、調査を依頼した病院および介護施設の協力により、1つの病院および介護施設で長時間(最大10時間)のデータを録音することができた。これにより録音件数は減ったものの、長時間のデータが得られ、分析結果を一般化することにより近づけたと言える。また、録音を許可された場面も、当初予定していた報告や相談といった看護師あるいは介護スタッフ同士のコミュニケーションに加えて、医師と看護師のコミュニケーション、患者(利用者)とスタッフのコミュニケーションなど、当初の想定以上のバラエティに富んだ談話データを入手することができた。つまり、調査件数上では計画よりも少なく達成度が低いように思われるが、録音したデータの内容を考えると、計画以上のものが得られたと言える。その意味で、本年度の研究はおおむね順調に進展していると言える。また、医療関係者や介護関係者の学会やワークショップに参加して情報を収集し、本研究をいかに医療現場および介護現場における外国人従事者の日本語教育に役立てるのかを考えることができた。録音調査の協力先にて、外国人スタッフがいる場合は、外国人スタッフおよび受け入れ先の日本人スタッフにインタビューも行い、ニーズ調査も行った。さらに、録音調査および書き起こし作業だけでなく、学会や研究会への研究発表申込みも行い、次年度の研究活動の準備も行った。以上より、当初予定のデータ蓄積、現場のニーズに関する情報収集、研究発表準備を行ったことより、本年度の達成度はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度得られたデータの書き起こし作業を進め、それをもとに分析および考察を進めると同時に、談話データのさらなる収集を行う。まず、本年度得られたデータの書き起こし作業については順次行い、終了した書き起こしデータを協力先に送付し、研究上の使用許可を得る。その際は協力先を訪問し、個人情報の取り扱いについて、詳細に打合せを行う。本年度のデータは種類が多く、また発話者ごとのデータ数も多いため、様々な場面における個人差のない研究結果が得られる。そのため、本年度のデータを使用して、事例研究をすすめ、研究結果を発表していく。一方で、本年度得られたデータは録音協力先の数は少ない。つまり、個人差はないものの、病院や施設による差があるかもしれない。そこで、研究発表と同時進行で録音調査を続行する。本年度は調査件数が少なく、山口県内で一部の調査を行ったこともあり、調査に伴う旅費や宿泊費が予定より少なく、その分が次年度使用額となっている。この次年度使用額は、主に次年度の調査用旅費に使用する。調査は本年度同様、調査依頼状を送付し、返信のあった協力先へ出向き、調査の詳細な説明を行う。調査の承諾が得られた後録音を行い、書き起こし作業を行う。そして補充したデータをもとに研究発表の結果が他の病院や施設でもあてはまる、つまり病院や施設による差がないことが明らかになった内容について、研究論文をまとめ、学術雑誌への投稿を行う。また、本年度得られたデータが当初計画よりも種類が豊富で、患者や利用者との談話も含まれることから、本研究の結果が、看護や介護の日本語の教科書にどの程度反映されるのか検討する。本研究は基盤研究であるため応用の可能性を詳しく探ることはできないかもしれないが、日本語の教科書だけでなく、英語の外国人看護師向けの教科書も参照し、本研究がどのように日本語教育に寄与する可能性を有するかを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に3つの目的に沿って使用する。1)談話の録音調査にかかる費用: 本年度の録音調査では、1件の調査に時間をかけたため、調査協力先の数が十分とは言えない。そこで、病院および施設による違いを考察し、より一般化した研究結果を提示するために、次年度も録音調査を続行する。調査の手順としては、(1)調査依頼状を病院および介護施設に郵送する。(2)返信のあった病院および介護施設に出向き、調査手順および個人情報の取り扱いについての説明を行う。(3)録音許可が出た協力先に出向き録音調査を行う。協力先によっては、患者あるいは利用者への配慮から研究者の同席を拒否し、協力先自身で録音調査を行う場合もある。(4)録音したデータの個人情報の処理作業を行い、書き起こし作業を行う。(5)全てのデータを協力先へ送付し、使用範囲などの検討を依頼する。(6)協力先へ出向き、データの使用範囲などについて細かく打合せを行い、使用承諾書および誓約書への記入を行う。以上、(1)~(6)に必要な通信費、消耗品、旅費、機材費、調査協力謝礼費などに使用する。2)研究発表にかかる費用: 次年度は研究発表も行うため、それに伴う旅費および宿泊費などが必要である。次年度発表を予定しているのは、8月に名古屋にて行われる日本語教育国際研究大会、および12月に広島にて行われる医療コミュニケーション教育研究セミナーである。それ以外にも発表を予定しているが、別予算で行くことが確定しているため、本研究費を使用した発表予定は現段階では上記の2つである。3)教科書分析にかかる費用: 本研究の日本語教育現場への応用の可能性を考察する材料として、日本語および英語で書かれた外国人用の医療教科書の分析を行う。それに伴い、教科書の購入が必要である。
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